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確かに、これらの状況に適応しきれずに悩んでいる方々のほとんどは、あいまいにすることに慣らされているため、自分の責任を求められたとき、どうしてよいかわからずに計り知れない不安と孤独感に追いやられて不適応を起こしてしまっていることが多いようです。

私が臨床の現場で扱ういじめ(大人も子どもも)、不登校、出社拒否、摂食障害、アダルトチルドレン、学級崩壊、虐待、家庭内暴力などのほとんどは、少なからず現代社会の大きな変化に上手に適応できないことが原因となっています。つまり、いままでの日本の伝統的な価値基準では、個人のレベルでも十分な対応が困難になっているということです。

そのような過渡期の中で、新しいかたちの自立が求められているのは確実です。その一つが自分と他人の間にバウンドリー(境界線)を確立することです。日本の社会では極端な個人主義ではなく、自己の責任と他人(社会も含めて)の責任を明らかにする(バウンドリー)ことで自己責任を明確にすれば、日本的な自己確立が可能となるのではないでしょうか。つまり、社会や家族の絆を保ちつつ、自らの責任を自覚して生きていくという生き方です。

本誌はそのようなテーマをもとにお話しした講演をまとめたものですが、その内容は、筆者が臨床心理学の博士論文を書くために実施したバウンドリートレーニングのマニュアルを用いました。このマニュアルは、H.CloudとJ.Townsendの共著『Boudaries』の概念をそのまま使用し、筆者がまとめたものです。さらに、バウンドリー概念を臨床で実践した経験も、本誌に含まれています。ぜひバウンドリーの原則を理解し、現実の生活に実践されることを願っています。

 

 

 

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