は じ め に
日本人の性格の一つに、ものごとをあいまいにするということがあるのではないでしょうか。もちろん、意識的にというより、知らず知らずのうちにそのようにしているのでしょう。人々が本心や本意をなかなか明かさないのも、あいまいにすることの一つの現れかもしれません。そうしないと日本の社会では和が保たれないのでしょう。したがって、日本人の人間関係の基本は、自分を抑えて周りに合わせることだといえそうです。
しかしながら、日本はあらゆる領域で国際化が進み、いままでの日本の伝統的な基準だけでは、国としても、また会社や個人としてもやっていけないようになりつつあります。大企業といえども思い切った改革なしには、生き延びることが困難になっています。少しずつではありますが、生存のために構造的な変化が進んでいます。たとえば、終身雇用制度が見直されつつあります。また、核家族、少子化などはそれぞれの人たちの人生設計に少なからず変化をもたらしています。会合の折など、出席されている方々に、「みなさんのなかで、老後を子どもにみてもらうことを望んでいる方はどのくらいおられますか」と尋ねますと、手を上げるのは1割前後、ある時など誰も上げなかったということすらありました。「介護は家族の手で」という日本の長年の伝統が変わりつつあるのでしょう。
しかし、このような大きな変化の中では、いままであいまいのままにしてきたこと、つまり家族や会社にまかせてこられたことが、今度は自らの考えやプランなどを明確にもち、自己確立をしないと、現実の変化や問題に十分に対応しきれなくなるのではないでしょうか。