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国際保健協力フィールドワークフェローシップに参加して

 

天川 一利(国際医療福祉大学保健学部放射線・情報科学科3年)

国際医療協力に興味を持つきっかけとなったのは、大学の授業で“New Horizons in Health”というWHOの西太平洋地域事務局のDr.S.T.Hanらがまとめた小冊子を読んだことから始まる。今回、そのWHOに訪問し、講義を受けることができ本当に感激している。また、今年から西太平洋事務局長に日本人のDr.Omiが就任し、日本人の活躍が期待されている。今回の海外研修地はフィリピンであり、この国は私の祖父がミンダナオ島のダバオで移民として働き、また、父が生まれた国である。いつかは訪れてみたいと思っており、この研修に参加することに不思議な巡り合せを感じた。

まず、中部ルソンのタルラックにおけるJICA母子保健プロジェクト(DOH-JICA FP/MCH Project)では青年海外協力隊の保健婦の発案により母子手帳が使われ、妊婦と乳児の健康管理に貢献していた。コメディカルの中では看護婦、保健婦、助産婦などの活躍が目立っている。この研修を通じて途上国では疾病対策が主であり、放射線部門やリハビリテーション(PT、OT、ST)部門の優先度はまだまだ低いと感じた。

現在、全世界の人口の約70〜75%の人々が放射線による恩恵をうけておらず、また、X線検査を受けても質が悪く、検査が限られている。今回訪問したマニラのフィリピン総合病院(PGH)の放射線部門は、国立の大学病院だけあって一般撮影装置、透視撮影装置、2検出型SPECT、ヘリカルCT、USなどの画像診断装置が充実しており、放射線治療部ではコバルト遠隔治療装置も使用されていた。逆に地方に行くと、無医村が多い。町村レベルの保健センターにある歯科でさえ床屋なみの設備でX線撮影装置もなく、抜歯のみ行う状態であり、両者の設備の違いに驚きを覚えた。貧しい患者さんは医療費が無料であるため、医療費の高騰を招くX線検査はできるだけ少なくし、また、装置自体が高価、さらに維持費も高い。以上の理由のため、X線装置が大病院に集中して地方にX線装置が行き渡らないのかもしれない。WHOの薦めるBRS(Basic Radiological System)のように、低価格で構造がシンプル、堅牢かつ故障した場合のメンテナンスが容易なX線撮影装置などが途上国で用いられ、今後、途上国で多く使用されるX線撮影装置と先進国のX線撮影装置とではX線発生装置でみると単相とインバータ方式といったように二分化するだろう。さらに途上国でもX線装置を使ってもらうためには機材供与、技術供与ばかりでなく、装置も含めてX線検査を安価に行うための研究も必要だと痛感した。

また、途上国におけるリハビリテーションの分野ではコミュニティーによるリハビリテーション(CBR)を展開している。これは、ヘルスワーカーによる指導でコミュニティーで組織したグループや同じような障害者を抱えた家族同士によって障害者のリハビリが行われている。専門分野からのアプローチも大事だが、忘れてならないのは、行政的なアプローチも大切であること。今後は、コメディカルの分野からもWHO、厚生省などで活躍する人材がどんどん出てきてもらいたいと思う。

最後に、全国の大学から選出された医学部、保健学部の学生とも交流でき、多いに刺激を受けた。この国際保健協力フィールドワークフェローシップを通じてこれからもネットワークを結んでいきたい。

 

 

 

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