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フィールドワークフェローシップ海外研修に参加して

 

本庄 太朗(筑波大学医学専門学群4年)

一昨年は国内研修でお世話になったこのプログラムに、今年は再度申し込んで念願の海外研修に参加することができた。

WHO西太平洋事務局、フィリピン保健省、いくつかのNGOと、ひとつの国の医療事情をいろいろな角度から見聞きするという経験を通して、人々の健康に対するアプローチが様々なかたちでなされること、そのどれもが必要であることを知った。そしてそういった医療システムやサービスのなかで生きる人たちの姿が、私の中にいまも強い印象として残っている。

ホセロドリゲス病院で出会ったハンセン病患者のおばあさんは、キリストの像や植物の絵を描いていた。ゴツゴツに変形してしまった手にカラフルなサインペンを握って描くひとつゆずってもらった花の絵は今も私の部屋の壁に咲いている。

ストリートチルドレンの施設で、子供達は無邪気で元気いっぱいに遊んでいた。しかし懸命なほどにスキンシップを求める子供達の姿に、過去に彼らが負ったつらい経験を垣間見たようで、切ない思いを感じた。

UPの医学生たち、Botika Binhi(薬の生活協同組合)を支えるフィリピンのお母さんたち、岩永先生をはじめとするJICAスタッフのみなさん....フィリピンという国のそれぞれの状況で、問題を持ちながらも生き生きと過ごしている人たちとお会いして、私の五感にデータを超えた直接的なイメージが残っている。

そのイメージの中で出てくる問いは、幸せとはなんだろうか、というものだ。最終日に総括ミーティングで話題になったことでもある。日本の私たちはこころから幸せと言えるだろうか?。ともすると、私たちは自分自身の幸せを追い求めるので精いっぱいの日々である。一方でフィリピンの人々はホスピタリティーにあふれ、笑顔を絶やさない。それは誰かのために何かができる手応えというものではないだろうか。

WHOの尾身先生は「そのときどきで好きなことを徹底していたら、その延長として事務局長になっていた」とおっしゃっていた。好きなことをとことんまでやって、「いま幸せですか」と問われたとき素直に「yes」と答えられるような、そんな日々を過ごせたらどんなにか素晴らしいことだろう。そのために今、学生としてできることは何か、考えていきたい。

最後に今回の参加に関してお世話になった方々へ心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

 

 

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