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「幸せ」については、最終日の総括ミーティングでも取り上げられたテーマであった。そこでは学生それぞれから様々な幸福観が出されたが、面白かったのはそれらを総合してみると、信念、規範、性格といった自己の内面性に基づくmentalなものと、周りから必要とされる感覚といった他者との関係に基づくsocialなものと、動く、食べる、笑うといったphysicalなものに分類できるように思われたことである。これではまるでWHOの標榜する健康の定義である。幸せと健康の共通点を思いがけなく発見し、「幸せ」の不感症に陥っている先進国日本のことをやはり不健康であったのか、と改めて感じる一コマであった。

その他に印象に残ったのは、海外で活動している日本人が意外に多く、その人達が皆生き生きとしていたことである。今まで私は、国連活動にしてもODAにしても日本が頼られるのは資金面ばかりで不甲斐ないという印象を持っていたので、このことは非常に頼もしく嬉しいことに思われた。

最後にもう一つ、NGO活動に対する印象を挙げたい。恥ずかしいことであるが、私はNGOが何たるかもよく知らないままに、偽善とか自己満足という偏見を心の片隅に抱いていた。しかし今回、いくつかのNGOを見学して実際に行動する、ことの大切さを知った。見学したNGOが特に成功しているところであったにせよ、逆に言えば、そこまでNGOで出来るということである。また、今回見学したNGOのメンバーの大半は女性であった。私もこれから何か実際に行動をしてみたい、と心揺さぶられた。

私にとって、この国際保健フィールドワークフェローシップは一言で言えば、世界を広げてくれた研修であった。国際機関、政府、NGOとそれぞれの道で働く保健関係者のことを知り、こんな進路もあると教えてくれた研修であり、世界的に見ればむしろ標準レベルである衛生環境を実際に見ることの出来た研修であった。この経験を生かせるかは今後の自分次第である。そのことを肝に銘じて今後納得の行く医師像を自分なりに模索してゆきたい。

 

 

 

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