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国際保健協力フィールドワークフェローシップに参加して

 

木村 亜希(東京大学医学部健康科学・看護学科4年)

昨年は国内研修のみの参加でしたが、貴重な経験から、私の国際保健協力への思いは強くなっていました。ただ、海外に目を向けるというのではなく、国内で学ぶべき事は沢山あると言うことも学び、国際保健の勉強会に積極的に参加するようになりました。その甲斐あってか、2回目の応募でフィリピン研修に参加できることになり、嬉しさもひとしおでした。そして、去年の私のように歯がゆい思いをしている人にもこの経験を伝え、輪を広げていきたいという思いを胸にフィリピンへ向かいました。

フィリピンは、私が去年PHCの研修で行ったタイとは違い、PHCの失敗例として取りあげられることが多かったので、PHCの成功と失敗の原因は何なのかこの研修で見てきたいという思いがありましたが、それは既に偏見でした。その国その国で文化や歴史が違うように、様々な状況があり、単に成功・失敗という結果論では語れないものがあります。勿論、評価は絶対なくてはなりません。その評価のためにも、結果だけでなく、その背景の調査からプロセスの観察、それらの解釈が必要だと感じました。そして本から学ぶことの出来ない、肌で感じることの重要性、その真実性です。

今回の研修では国際保健のTOPからBOTTOMまで、それこそ、国際機関のWHOの西太平洋事務局から村レベルのヘルスポストまで見られました。そのなかでも、JICA専門家の岩永先生のおかげでGOGO-BARまで見学できました。直視するのは辛いですが、普通は避けて通ってしまいがちで見ることの出来ない現実を見る機会を与えて下さいました。そこで感じたことは決して消え失せることはないでしょう。

今回はGOだけでなくNGOの立場も見学できました。保健医療ではやはり国レベルでの保障が求められますし、GOでは出来ない部分をNGOが担うことも必要です。保健医療は基本的人権であり、NPOの立場で考えるべき事ですが、市場として入り込むには多国籍企業の介入があっても良いのではないかと考えます。フィリピンは、発展途上国ですが、至る所にマクドナルドなどのファーストフード店があり、コンビニだけでなくスラム街でもコカコーラが並んでいます。現在、国際保健を考えると、未開発の地ではなく、このように、発展しつつあるが貧困から抜け出せなく二重苦を背負っている国が問題となります。

そこで思うのですが、企業が自社の利益をもっと広い目で見るならば、雇用促進だけでなく、地域に根付いた福祉サービスを展開することも可能なのではないでしょうか。

コーラの瓶が僻地にも届くならば、その運送経路を使い薬品を届けたり、その空き瓶でちょうど適量のORSを溶かす教育もできるでしょう。ただ、実際にはそんなに簡単にいく問題ではないのは分かっているつもりです。今後、経済学的な視野も含めて考えていきたいと思います。

そして、このような些細な疑問から、精神心理の深いところの話まで語り合うことの出来る友を得られたことは大きな喜びです。最後になりましたが、このような機会を与えて下さった本企画委員会の先生方、講演下さった先生方、笹川記念保健協力財団、国立療養所多磨全生園、高松宮記念ハンセン病資料館、結核予防会結核研究所のみなさまに深くお礼申し上げます。

 

 

 

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