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国際保健協力フィールドフェローシップに参加して

 

炭谷 由計(杏林大学医学部5年)

ネパールの山村を2週間かけて歩き、途上国の人々の生活に触れ、国際医療協力に漠然と興味を持ち始めたのはつい昨年のことである。大学の授業や一般的な書物では国際医療協力とは一体何で、何ができるのか全体像がほとんど見えてこなかった。今回の研修で国際医療協力の全体像を学び、もし将来、国際医療協力に参加するなら、残りの学生生活で何をすべきで、将来医師の立場から一体何ができるのか、その糸口を見つけることが参加の動機であった。

研修前、国際医療協力に参加するには、ただ漠然と医療技術と語学力があればよいと思っていた。しかし、研修に参加してみて実際には語学力は当り前で、現地の技術者を指導できるだけの最新の専門的な医療技術が要求されることを学んだ。また、国際医療協力はただ医療技術を移転するという単純なものでなく、援助の意義を十分に理解してもらい、生活の根本を変え自立へと導かないと表面的な一時的な援助で終わってしまうこと、効果的な援助を行い生活の根本を変えるには、政治、経済、文化、宗教、環境など様々な分野の問題が関わってくるため、医療関係者だけでなく様々な立場の人との関わりが重要であることを学んだ。そして、国際という言葉の持つ派手な響きの裏には、地道な努力と苦労が山ほどあることを実感した。

また、今回研修に参加して得たものの一つに、同じ興味を持った他大学の人と仲間になれたことである。同じ学生でありながら、すでに何カ国もの途上国を訪れ活動している人、大学にサークルを作り活動している人、英語が流暢な人、今まで何も知らなかった自分は彼等の凄さに圧倒された。しかし、ディスカッションをしたり、食事を共にし、飲んで語り合う間に、彼等の経験の深さから色々学び、よい目標になっていった。

研修では国際医療協力に関わる様々な立場の方々から貴重な生の声が聞け、医師として国際医療協力に様々な関わり方があることも学んだ。高度な医療技術を持った医師が国際医療協力の舞台で活躍している現場に触れることができ、卒業後、どこかの病院に勤務し続けることが世の中に貢献する唯一の選択肢ではなく、医師として世の中に貢献する他の一つの可能性を強く実感することができた。

今回の研修では、国際医療協力に興味を持ち始めたばかりの自分にとって、次々に目に飛び込んでくるもの、耳に入ってくることの多くがとても新鮮で莫大な情報量であった。研修を終えて、自分の中での国際医療協力の枠組みは指数関数的に膨張したが、莫大な情報量に初心者の自分はかえって漠然とした感じがある。研修で得たすべての情報を今すぐに整理して、すべてを理解することは不可能であるが、今回の貴重な経験をこれからの人生で事あるごとに振り返り、その都度少しずつ活かして行きたいと思う。

最後に、学生時代にしかできない貴重な経験をさせて下さった、すべての関係者の方々に心から感謝申し上げます。

 

 

 

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