日本財団 図書館


フェローシップが自分たちに与えたもの

 

堤 正秀(山口大学医学部5年)

今回フィリピンには14名の学生が行くことができたが、実際、将来国際保健の分野に携わっていくのはせいぜい1人か2人であり、そのほとんどが国際保健の分野で働くことはないであろう。しかし、このフェローシップから私たちが得、果たしてきたものは決して少なくはない。

第一に、私たちが得た経験は自分たちだけの中で終わるものでなく、周りに広がり、国際保健が広まるきっかけになっているからである。今回のフェローシップも学会で報告を予定しているようである。フェローシップヘの参加をきっかけに大学内で本格的に国際保健の勉強会を始めた人もいる。また誰もが大なり小なり報告会を行っているはずである。友達に体験談を話すだけでも小規模ながら確実に広めている。

第二に、WHOやJICAの国際保健のトップから、JICAの末端やNGOなどのボトムまでの実際を見、話をじかに聞き、感じることによって、個人それぞれが持っていた先入観を修正する機会を与えられるとともに、新たな視点からものごとを考えたり、いっしょに廻った他の人の考え方を得ることができる。これは、私たちが考えや視野を広く持つようになり、人間的に深みを増している。

第三に、友人ができる。このフェローシップには比較的優秀でおもしろい人間が参加しており、約10日間の共同生活を通して、友人となったことは、何にもまして大きな財産である。社会に出てもこの関係は続くであろう。

次に、自分を振り返る機会となる。自分の場合は英語力不足だけでなく、人間的な厚みがもっと必要であり、他に自分のことについて痛感することが多くあった。他のメンバーも自分のことについて考えることは多かったにちがいない。自分の将来の希望を修正した人もいるでしょう。このように自分を振り返ることは、将来を見据え、今の自分に何が足りないのか、見極め努力し自分を高めることになる。

以上のように、今回のような機会は多くのものを自分たちに与えてくれている。そして、国際保健を育て、国際保健に携わる者を育て、人を育てる。これが、フェローシップが目には見えないが、大事な役割だろう。フェローシップがこれからも続くことを願う。

最後に、このような貴重な機会をくれた方々、陰で支えて下さった方々に厚くお礼を申し上げます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION