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*自己管理能力

また、時間管理、健康管理を含めた自己管理の難しさ、団体行動の難しさについての話も出た。正直なところ、時間が守れない場面が多々見られた。また、日常とは全く異なる異国の環境、初対面同士でありながら、集団行動をとらざるを得ない状況は多くのストレスを生み出したことであろう。各参加者の今後の課題となる。

 

<研修からフィリピンについて分かったこと>

次に、今回の研修でフィリピンについて分かったことがディスカッションされた。

「コミュニティー」、「キリスト教」、「女性の社会進出」の3点が大きく取り上げられた。

*コミュニティー

現在の日本に比べ、フィリピンのスラム・農村において、共同体としての意識がしっかりと保たれていたとの意見が出た。ただ私たちがたまたまコミュニティーがうまく機能している現場ばかりを訪れたという可能性はある。私達が回った現場に関する限り、保健所スタッフ、NGOスタッフのコミュニティーへの献身ぶり、また住民が保健活動へ積極的に関わろうとする姿勢が特に印象に残っており、コミュニティー内の健康保健はコミュニティーが主体的に責任を持とうとしていると感じた。

フィリピンは、スペイン支配まで広範囲の統一政治体制が確立されたという歴史を持たない。フィリピン各地に30〜100戸という小規模なバランガイと呼ばれる首長社会が散在しているに過ぎなかった。またバランガイの住民は、首長の親族か姻族であったのでバランガイは親族集団そのものであった。現在もバランガイが最小行政単位として地方行政の基本となっている。現在のフィリピンにおけるコミュニティーの結びつきの強さは、フィリピン人が歴史的にバランガイを基本として社会生活を営んでいるという民族性と結びつけることができるかもしれない。

*キリスト教

キリスト教が社会に及ぼす影響力の大きさが印象的であった、という指摘があった。16世紀、スペイン統治下における住民のカトリックヘの改宗強制以降、キリスト教はフィリピンに深く根づいている。現在、フィリピン住民の93%がキリスト教徒である。キリストの教えはフィリピン人の精神の支えであり、道徳・倫理であり、希望である。教会は礼拝の場であり、集いの場であり、コミュニティーの中核として重要な役目を担っている。実際、教会は住民の健康保健活動のために場所を提供していた。

また、フィリピンにおける多くのNGOの活動方針はキリスト教と深く結びついていた。またスタッフの献身、ボランティア活動もキリスト教に対する信仰心によるところが大きい。

*女性の社会進出

3つ目に女性の社会進出が進んでいる、という指摘があった。私たちが訪れた政府官庁、WHO事務局、NGO事務所、JICA事務所、病院、保健所のどの場所においても女性の姿が目立ち、また責任者のポジションに女性が就いているケースも多かった。「職場における男女差別はありえない。」と言い切る女性スタッフの発言からも、フィリピンでは日本よりもはるかに女性の社会進出が進んでいると言える。ただし、フィリピンにおいては貧富の差が激しく、富裕階級の家庭ではメイドを低賃金で雇うことができる。

 

 

 

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