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大きく2つのタイプに分けられる。まず、自分の目で現場を見、そこから断片的な情報を帰納法的に集めて理解を深めるタイプの人間。逆に現場を見るよりも先に本や論文を読んだり人の話を聞いて自分の中でイメージを作ってから現場を見、さらに理解を進める演繹法タイプの人間。この両タイプの差はプログラム中の案内者への質問、現場を見て回る際の行動、discussionのときに表面化した。案内者に対する質問において、帰納法的タイプは現場における個別のケースの話を聞きたがった。一方、演繹法的タイプは案内者の現場に対する解釈モデルを聞きたがった。現場を見て回るとき、帰納法的タイプは患者さんやスタッフとのコミュニケーションを重視し、演繹法的タイプは施設の規模や設備を見たがった。言語、文字によってなされる説明は、その表現者が「事実」を解釈した「モデル」であり、その「モデル」は「事実」を単純化、理論化したものである。「モデル」は「事実」そのものではないことは明らかである。ところが私達は時として、本を読んだり人の話を聞いたことで「現実」が分かったつもりになる。実は表現者の「モデル」を理解したに過ぎない。また、「モデル」と「事実」が相違する場合、複雑怪奇な「現実」より理解が容易な「モデル」の方を重視しがちである。現実を目の前にした際には十分に気をつける必要があるとの感想が出た。

 

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総括ミーティング

 

*コミュニケーション能力

次に参加者のコミュニケーション能力についての話しが出た。参加者の中からは、英語によるコミュニケーションを取る必要のある場面に遭遇する度に英語力の不足を認識させられた、という反省が述べられた。また、ミーティングにおいて自分の意見を簡潔にまとめ発表することの困難や、自分の聞きたい質問を的確に行うことの難しさを述べる参加者もいた。表現力、英語力等の言語的コミュニケーション能力は重要である。しかし、もっと重要なのは非言語的コミュニケーション能力であるとの意見が出た。コミュニケーション時には相手に対する心の持ち様が言葉のやりとりよりも大切である。心の持ち様は態度、姿勢、身振り、表情などの非言語的コミュニケーションに出やすい。

言語的コミュニケーション能力は努力すれば誰でも手に入れることができる。しかし、心の持ち様の鍛錬に関しては、自己反省を強いられるなどかなりの困難を伴う。

 

 

 

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