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それゆえに富裕層の女性は家事労働から開放されているという現実があり、単純に日本の状況とは比較できないことは留意すべきだろう。

 

<来年以降の研修プログラムヘの提言>

まず、日程が慌ただしかったとの意見が出た。自由時間を増やしたスケジュールの方が肉体的にも精神的にもゆとりがもて、より充実したプログラムになるのではないか、との意見であった。また、農村での1泊ないしは2泊のホームステイがあればよりコミュニティーに対する理解が進んだだろう、との意見もでた。他に参加者の選考に関する意見も出た。参加者の中にコ・メディカルの学生や他学部を修了した医学部生の人数をより増やせば、グループ全体として視点が広がるのではないか、という意見であった。

 

<幸せとは何か>

参加者の一人が、「フィリピンの農村の人々は活き活きと生活をしており、物質的に満たされた日本人よりもはるかに幸せそうに見えた。」という意見を述べた。そこで研修の締めくくりとして「幸せとは何か」というテーマでディスカッションすることとなった。

「幸せ」について公の場で語ることには、ためらいや恥ずかしさが伴う。また、「幸せとは何か」という問いは答えの出ない問いでもある。しかし、あえてこのテーマで話を進めることとなった。「幸せ」すなわち「幸福」は一人一人の人間にとっては人生を通じての重要な問題であり、最大の関心事であり、古来より多くの宗教家、哲学者、思想家が取り組んだテーマでもある。個人の幸福と社会の幸福についても議論の的であった。

*フィリピンにおけるキリスト教とコミュニティー、そして家族

フィリピンにおいて幸せを感じやすい要因としてキリスト教の影響が挙げられた。信仰、希望、愛は幸福をより身近なものとしている可能性がある。

また、フィリピンの農村におけるコミュニティー意識の高さと血縁関係の強さを要因としてあげた参加者がいた。コミュニティーや家族から必要とされていると感じることのできる環境や「他人を信頼でき、自分も信頼されている」環境は幸せをより感じさせるかもしれない。

ところでフィリピンは自殺率が世界でも低い国としてあげられる。また、思い悩まない民族として有名なのだそうである。

*日本人の環境

次に日本人を取り巻く環境と幸せについて話しが進んだ。戦後、日本は物質的に豊かになった。家庭電化製品の普及、交通手段の発達等、利便性が良くなったために日本人は昔に比べて体を動かすことが少なくなってきた。労働環境もデスクワークが増え、子供たちは学校、塾での勉強と頭のみを酷使することが多くなった。このことが、精神的なストレスの発散を難しくし、「幸せ」を感じさせる機会を減らしているという意見が出た。

 

 

 

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