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しかし首都圏中心部近くで複数行政圏に位置する狭山丘陵と山形県の一つの町にすぎない朝日町とでは社会的条件が著しく異なるということを考慮する必要がある。

一方、首都圏中心部に近い1]多摩川エコミュージアムや3]環・円海山エコミュージアムは社会的条件が狭山丘陵に近い。特に3]環・円海山エコミュージアムは複数の行政圏にまたがって事業展開している点が注目される。しかし、この事業はあくまで市民団体間のネットワークづくりに主眼をおいているため行政とのつながりが弱く、地域資源の有効な保全や活用に限界があることを考慮したい。

そして行政との関係の観点では1]多摩川エコミュージアム、2]朝日町エコミュージアム、4]都留市まるごと博物館は、行政がそれぞれのあり方にそくした形でエコミュージアムに関わっている。しかし、1]のように行政と市民のパートナーシップを目指しているものの、行政側に依存し過ぎ、市民の主体性が十分に発揮されていないケースもある。

その逆に4]のように市民の参加がなく、行政だけが主導となってしまっているものもあるので、行政と市民の連携のバランスを考慮しなければならない。

また、狭山丘陵におけるエコミュージアムでは、里山の自然を核とした地域づくりが主体となるため、類型としては図II-2-5の分類によってH〜P型となるであろう。

これらをふまえ、雑木林博物館づくりにあたっては、3]環・円海山エコミュージアムを参考とした複数行政圏にまたがる地域で展開する自然系の市民団体相互のネットワークの形成と、1]多摩川エコミュージアムの問題点を考慮した行政と市民団体との関わり方、そしてH〜P型に欠除しがちなM型の側面、すなわち4]都留市まるごと博物館の要素をふまえ、総体として2]朝日町エコミュージアムを参考とした事業展開、組織づくりから重要な示唆が得られるものと思われる。

 

 

 

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