また、「エコ」という言葉が自然系にかたよったイメージが強いためエコミュージアムという用語を用いず、まるごと博物館と呼称している。
広報は、市報においてまるごと博物館構想の内容やミュージアム都留の情報を掲載している。また、ミュージアム都留館内においてもコンピューターによる情報検索のコーナーが設置されている。
f. 課題:
まるごと博物館構想を広報してから約1年経っても、市民からの反応がない。そのため市民へのさらなる周知と市民とのつながりの強化が必要。
また、行政内部においても構想実現化に向けての意識改革が必要である。
今後は、ミュージアム都留と既存諸施設、市民団体との連携・協力の推進をすすめ、豊富な自然や文化財等の地域資源を有効に活用し、観光的な地域おこしではない、市民のアイデンティティの確立や精神・文化的に充実したまちづくりとしての博物館構想実現を目指す。
(6) まとめ
エコミュージアムの概念は、エコミュージアムが地域の文化や自然を保護し、住民やその居住地域について理論的、実践的に研究・調査し、地域の将来の問題をより深く理解することを住民に奨励するような、保存の場、研究所、学校という3つの機能を持つというもので、地域独自の文化を再確認し発展させることを目的としている。具体的には核となるコア・ミュージアムと、実際のその地域の自然・産業・文化などのそれぞれを見せるものとして位置づけられた衛星博物館(サテライト・ミュージアム)の全体をネットワークすることによって実現しようとするものである。
このような概念に基づくエコミュージアムの構成要素は、[1]M(museum)、[2]H(heritage)、[3]P(participation)からなるとされる。まずM(museum)は博物館活動で、これには主に調査研究、収集保存、展示教育普及の3つの活動が含まれる。次にH(heritage)は地域における自然、文化遺産、産業遺産などを現地において保全すること。そしてP(participation)は住民の未来のために、住民自身の主体的参加による管理運営が行われることを含意する。これら3要素のバランスがとれていることがエコミュージアムとして必要なのだが、実際には日本国内および海外においてもこの3要素(M・H・P)のバランスが均等にとれている実例は乏しい。今回調査を行った4例をこの構成要素のバランス(図II-2-5)に基づき類型化すると以下のようになる。
1]多摩川エコミュージアム:
P〜H型。多摩川という一定のエリア内の自然、文化、産業遺産を現地にて保全することを通じて住民、行政一体となってまちづくりを行おうとするエコミュージアム。
2]朝日町エコミュージアム:
P〜M型。地域住民が地域の生活や文化、自然の再認識、再評価を行い、それら資源の活用を図るまちづくりを行おうとするエコニュージアム。