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4) 自然遊びの喪失

 

(1) 里山の暮らしと遊び

里山の暮らしにおいては、子どもたちの遊びもまた地域の自然と深いかかわりもっていた。大人たちが地形や植生、生物、気象等に関する豊かな知恵を保有していたのと同様に、子どもたちは子どもなりに自然に対する興味や畏怖の念を抱いていたものと考えられる。実はそのことを具体的にしかも明解に表現しているのが、自然を対象とした子どもの遊びである。

ここでは、狭山丘陵周辺の5市1町を対象とした聞きとり調査および文献調査の結果をもとに、大正・昭和期における自然遊びの特徴を分析する。なお、既存資料は以下の文献を参照した。

 

文献1]:

〈植物〉藤本浩之輔. 1989. 草花あそび辞典. くもん出版

〈動物〉斎藤慎一郎. 1996. 虫と遊ぶ. 大修館書店

文献2]:乙益正隆. 1993. 草花遊び・虫遊び. 八坂書房

文献3]:中田幸平. 1981. 自然と子どもの博物誌. 岳(ヌプリ)書房

文献4]:斉藤たま. 1974. 野にあそぶ. 平凡杜

 

1]遊びの形態による分類

子どもにとって自然遊びの対象となるのは、身近に存在する植物や動物である場合がほとんどである。なかには特定の遊びだけに利用される種もあるが、多くは複数の遊びを通じてそれぞれの特性を活かした利用が図られている。そこで、自然遊びの内容を形態的な視点から分類することにより、植物および動物とのふれあいにおける子どもの自然認識の一端を明らかにしたいと考える。

遊びの形態分類は、類似の遊びをグループ化することで表II-1-6に示す植物11分類、動物10分類という構成で整理を行った。このうち双方に共通の項目が6分類ある。以上の分類に基づいて文献資料および聞きとり調査の事例を集計したところ、図II-1-5〜6(詳細は資料編の表III-資-14参照)に示すような結果が得られた。

植物の遊びをみると、飲食をしたり玩具を作ったり音を出す遊びが木本類で6割以上を占めており、草本類でも玩具、音出し、装飾、飯事で6割以上に達している。また、動物の遊びにおいては虫捕りに代表される捕獲を目的とした事項で、子どもと自然の典型的なかかわり方がみえてくる。そのほか、動物の遊びで特徴的なのは、対象となる動物の動きや習性そのものを遊びにしていることである。これは動物の生態観察をとおして初めて発想できる内容だけに、子どもたちのもつ感性の豊かさが存分に発揮されていた証と受けとめることができる。

なお、狭山丘陵の事例では、植物の飲食を目的とした遊び、昆虫類の捕獲や性質の利用、競争等を目的とした遊びが比較的多く伝承されている。

 

 

 

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