また、暮らしの領域でとくに重要なポイントとなるのは衣食住や年中行事、娯楽(遊び)等における植物の利用および動物とのかかわりに関する伝承である。これは狭山丘陵の現存植生や生物相の特性をよく見極めたうえで、可能な伝承についてはできるかぎり復活・継承に向けた努力を行うことが望ましい。
しかしながら、伝承文化の継承には大きな壁が存在する事実も忘れてはならない。多くの伝承文化は、里山機能の衰退が始まると同時にその担い手である継承者を次々と失っていったのである。この過程で貴重な伝承が時代の狭間に置き去りにされてきたであろうことも容易に推察できる。残念ながら、このような埋もれた伝承をていねいに掘り起こす取り組みはこれまでほとんど行われていないのが実状であり、伝承文化における当面の緊急課題としておきたい。
