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当該地域では、5市1町にまたがる丘陵全域での悉皆調査が行われていないため、その地域特性や民間信仰とのかかわりについては一部の既存資料による概要把握にとどまっているのが現状である。しかし、これまでに確認された資料から判断すると狭山丘陵地域に遺存する石造物は相当な基数に及ぶものと推測される。とくに地蔵、庚申塔、馬頭観音は地域を問わず造立がさかんであったようで、当時の人びとの暮らしの一面を伝える貴重な民俗資料となっている。

石造物に限らず、すべての文化財を狭山丘陵地域の貴重な文化遺産と位置づけるならば、それらの保存はもとより当該地域の歴史、文化、自然環境の代弁者として活用できる工夫を積み重ねることが今後の里山管理や地域活動にとって大きな礎になるものと期待されるのである。

 

(2) 狭山丘陵の自然に関する伝承文化

一口に伝承文化といっても、その内容はさまざまである。当該地域に継承されてきた伝承文化については、聞きとり調査の結果を踏まえてすでに詳しく述べたとおりであるが、狭山丘陵の自然を核とした地域づくりを念頭においた場合には、表II-1-5に示すような分類をもって定義するのが適当と考えられる。

まず、生業の領域ではヤマの管理や農作物栽培における管理技術が、それぞれの生態的な認識に基づいた手法であることに着目する必要がある。付随する民俗知識とともに今後の里山管理に活かすためのより現実的な施策が求められることになるであろう。

 

表II-1-5 自然に関する伝承文化の分類

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注) ◎印は伝承文化として重要性の高いものを示す。

 

 

 

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