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3) 文化財および伝承文化の保全と継承

 

(1) 狭山丘陵の文化財

ここでとりあげる文化財は、いわゆる歴史的遺産としての文化財である。その代表的なものとして埋蔵文化財、神社仏閣、石造文化財等があげられる。とくに神社仏閣や石造文化財は、地域の暮らしや信仰、祭事と深いかかわりがあり、広い意味で里山文化の基盤をなしてきたことは確かである。

埋蔵文化財関係では、表II-1-4に示すようにこれまでの調査により狭山丘陵とその周辺地域で200ヵ所をこえる遺跡の存在が確認されており、その多くが丘陵の台地や河川流域に集中した分布を示している。主な集落遺跡としては、年代的に旧石器時代から平安時代までの遺跡がみられ、このうち縄文中期には数十軒規模の集落が形成されていたものと考えられている。

また、丘陵周辺には65の神社および64の寺院(堂跡を含む)が散在している(表II-1-4)。これらのなかには歴史的に重要な来歴をもつものがあり、その建造物や仏像、神木等が文化財に指定されている例も少なくない。里山の暮らしにおいては、一般に地域の社会組織や信仰の要として、あるいは人びとの精神的なよりどころとしての役割を担ってきたことが知られている。

 

表II-1-4 狭山丘陵地域の遺跡および神社仏閣

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注) 『雑木林博物館構想』(狭山丘陵を市民の森にする会、狭山丘陵の自然と文化財を考える連絡会議、1986)のデータより作表。なお神社仏閣については一部の地域について追加・修正を行った。

 

ところで、狭山丘陵にはかつての重要な交通路あるいは交易路としての古道がある。さらに、こうした古道沿いには主に近世以降の石造物(いわゆる石塔・石仏類)が造立されていることが多い。最近では社寺の境内や墓地、公共施設等に移転された事例が目立つようであるが、本来は民間信仰や祖霊信仰に代表される供養を目的としたものがほとんどである。その分布は丘陵内部よりも縁辺域に集中している傾向があり、おそらく特別な造立目的の場合を除きより身近な日常生活の領域に人びとの関心が向けられていたものと考えられる。

 

 

 

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