3]ヤマの管理技術についての伝承
ヤマの管理に関する伝承技術には、人びとの経験則に基づいた生態的な認識が活かされているものがあり、これらを各地域に共通する項目で整理したのが表III-資-11(資料編)である。このうち萌芽枝の仕立て方については、萌芽株の密度によって残す萌芽枝の本数を選択するという方法、つまり植生の管理を確実に行うための優れた技術が伝承されてきたことが分かる。その目的は、樹幹密度をなるべく一定に保つことによって薪材や落葉量を最大限に確保したいということにほかならない。
ところで、主要な薪炭材であるコナラとクヌギについて、生長や材質、落葉に関する伝承も記録でき、それぞれの特性を示したのが図I-2-3である。一般的にはクヌギのほうがコナラよりも生長がはやく落葉量も多いという認識があり、このことがかつてクヌギの植林がさかんに行われたという事実に結びついているものと考えられる。
いずれにしても、萌芽更新の伐採が約10年(場所によっては15年)周期でくり返され、その伐採から3、4年間は手入れをしないという事実も、その背景にこうした生態的な認識の裏付けがあったことは十分に考えられることである。
そこには、最終的に無駄な労力をできるかぎり省きながら、小面積の土地における生産効率を最大限に引き出そうとした生業の基本原則を見出すことができる。