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2]ヤマの管理

狭山丘陵あるいはその周辺地域に点在する農用林の管理については、樹木の伐採、萌芽枝整理および林床整理、落ち葉掃き、特定植物の管理の4項目から各地域別の伝承内容を整理して資料編(表III-資-10)にまとめた。これをもとに当時の一般的なヤマの管理の状況を図示したのが図I-2-2である。

さて、当該地域の農家では薪や落ち葉の採取は自家消費が原則である。したがって、萌芽更新に際してはヤマの所有面積と年間の燃料消費量の関係からほぼ伐採面積が決められていたものと考えられる。もちろん薪以外の燃料も利用されていたので単純な計算では求められないが、狭山丘陵における標準的な自作農家の里山管理では、年間に5畝から1反のヤマを伐採して薪(主要燃料)を得、さらに1反から3反のヤマの落ち葉を採取して堆肥その他の原料として利用していたようである。

樹木の伐採周期は約10年間隔というのが一般的であり、仮に上述のような伐採面積を標準として考えると、約5反から1町歩のヤマを所有していれば10年という萌芽更新のサイクルで必要な薪や落ち葉をまかなうことが可能になる。樹木(とくにコナラやクヌギ)の生長特性やそれに伴う落葉量の変化等も含めて総合的に判断した場合、おそらくこの約10年という伐採周期は農用林として最も効率のよい管理サイクルとして定着していたのではないかと推察される。

また、特定植物の管理事例ではアカマツの育成やススキの刈りとりがある。アカマツについては主に建築用材(幹)や燃料(落ち葉)としての利用を目的に実生苗の育成による更新が行われ、ススキは屋根葺材としてコナラ林の萌芽更新初期に生育するものを選択的に採取するのが一般的な利用方法であった。

 

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図I-2-2 ヤマの作業と管理

 

 

 

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