日本財団 図書館


延納制度としてリバース・モーゲージを利用することの利点は、福祉資金の提供と同じく、ストック・リッチ、インカム・プアーの人々を含めて、住宅資産は持っているがインカム・フローは年金などに限られている高齢者を中心に、担税力を上回る財産税を死亡後に清算、一括納税させ、生存中に納税のために持ち家を売却せずに済ませることにある。わが国の場合、固定資産税の速やかな負担水準の適正化にも間接的に貢献するところが大きい。また、契約者の死亡時に住宅が売却されるため、住宅供給が増大するという利点もある。

公的な福祉資金融資制度の場合、一定水準以上の担保価値のある不動産を所有している高齢者のみを対象としていること等から、福祉関連の制度としての問題点が指摘されることもある。しかし、延納制度として活用する場合には、財産税(固定資産税)がそもそも不動産を所有する者が納税者となるものであるからそうした問題は回避できるし、かつ、アメリカの財産税における持ち家非課税制度やサーキット・ブレーカーのように州の財政コスト、または地方団体の歳入ロスにつながることもない。

無論、リバース・モーゲージ本来の問題である、長寿リスク、不動産価格下落リスク、金利リスクの3大リスクは回避できないため、その対策を講じる必要がある。

 

2)基本的仕組み

リバース・モーゲージを活用した延納制度の基本的仕組みについて・リバース・モーゲージ方式の資金提供プランに関するVenti & Wise[1991]、野口・吉田・田村[1996]のモデルを参考に定式化しておきたい。

いま、高齢者の固定資産税納税者(土地)がa歳で延納制度を選択し、その時の評価額がHaであるとする(単純化のため、評価額=課税標準という本来のあり方を想定している)。評価額の上昇率が年率gで一定であるとすれば、a歳以降t歳時のその時点での土地の評価額は

 

(1 + g)t-aHa

 

である。契約者=納税者の死亡時に担保の土地(課税物件)全額を清算するものとする。また、抵当権の設定は固定資産税評価額に基づくものと仮定している。この納税者がt歳の時点でd(t、a)の確率で死亡するとすれば、課税団体に代物で弁済される不動産の価値額は

 

[(1 + g)t-aHa]d(t、a)

 

である。納税者が最高A歳まで生きるとして、リバース・モーゲージの貸出利子率がmであるとすれば、抵当権を設定された土地の現在価値Lは以下のようになる。

 

172-3.gif

 

となる。他方、n年において税額(税率rが将来一定と仮定)が全額延納対象となるとして、毎年の延納税額Pは

 

P = r(1 + g)t-nHa

 

である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION