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カリフォルニア州ではサーキット・ブレーカー制度は視覚障害者、身体障害者、高齢者の持ち家所有者、そして年間所得13, 200ドル以下の賃貸住宅居住者を対象とし、約20万人が平均92ドルの恩恵を受けている。また、持ち家非課税制度は資産価額の7, 000ドル分が非課税となり、約480万人に適用される。なお、非課税制度による財産税の減収額は州によって補填される。このほか、カリフォルニアではプロポジション13によって、財産税の評価額の上昇率が2%あるいは物価上昇率のいずれか低い方に制限されている。

ミネソタ州の持ち家非課税制度はすべての持ち家所有者を、また、サーキット・ブレーカー制度は持ち家所有者と賃貸住宅居住者を、それぞれ対象とするが、双方ともそれに係る費用は州政府によって負担される。また、持ち家所有者の財産税負担額が前年度よりも10%以上増えた場合、別の税額控除が適用されることになっている。

 

III リバース・モーゲージを利用した納税システムの仕組みと課題

 

(1) リバース・モーゲージの仕組み

リバース・モーゲージとは住宅・土地を所有する高齢者がそれを担保に資金を借り入れ、生活資金として利用し、契約終了時(通常は死亡時)に担保不動産を売却するなどして負債を清算するものである。住宅ローン等のフォワード・モーゲージは契約時に一括融資し、契約期間中に元利合計お定期的に分割返済して契約期間終了時に負債ゼロ、担保資産がすべて担保提供者の持ち分になる。これに対し、リバース・モーゲージでは原則として終身にわたって分割融資し、契約期間終了時に元利合計を一括返済し、その時点で多額の負債が残り、担保提供者の持ち分はゼロないし非常に小さな額となる。リバース・モーゲージでは、契約期間全体を通じて融資残高と持分の関係が、図1に示すようにフォワードに対し、リバースとなっている。

リバース・モーゲージの効用はフロー所得が少なく、比較的大きな不動産を所有している高齢者がそのリビング・ニーズに応じた生活を実現できることにある。こうした特性と、高齢杜会における在宅福祉の推進、豊かな老後を支える資金確保、経済基盤の拡充などの点からリバース・モーゲージに対する関心が高まっており、表2に示すように、16の自治体、福祉公社が有償福祉サービス等の資金提供の手法としてその利用を既に始めている。

東京の世田谷区のように金融機関と提携した間接融資方式が主流を占めるが、武蔵野市と中野区では公的な直接融資方式による福祉資金融資プランを整備している。また、このほか民間金融機関(信託銀行等8行)による種々の資金プランもある。

リバース・モーゲージ制度の先進国であるアメリカでは、住宅開発省(HUD)のHECM(Home Equity Conversion Mortgage、1989〜)や連邦抵当金庫(FNMA)のHome Keeper Plan(1996年〜)の公的プランが代表的なリバース・モーゲージ制度である。いずれも融資主体は民間金融機関で、前者は低額資産保有層、後者は中堅資産保有層を主たる対象として、使途自由の資金を融資している。

 

 

 

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