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(2) リバース・モーゲージの問題点

1)リバース・モーゲージの3大リスク

リバース・モーゲージにはその仕組みから、図2に示すような3大リスクが必然的に伴う。これらのリスクは単独で発生する場合もあれば、同時に複数で発生する場合もある。

1]長寿リスク

契約者が予想以上に長生きしたことにより抵当権を設定した不動産が担保切れを起こす。図2に示す長寿リスク損益分岐点の右側では、予想された金利の下での想定融資残高が、将来一定の率で上昇すると予想される不動産価格よりも上回ることになり、それが長寿リスクを生じさせる。なお、通常は死亡年齢が損益分岐点よりも左側にくるという前提で契約が結ばれる。

2]金利変動リスク

融資開始後に市場金利が上昇し、契約時に想定した金利を上回った場合、融資額の減少、担保割れが生ずる。図2の金利上昇による実際の融資残高と想定融資残高の所与の時点での垂直の距離が金利変動リスクによる融資残高(回収金額)の損失の程度を示すことになる。

3]不動産価格変動リスク

担保を設定した不動産の市場価額が予想を下回ったり、低下して、担保割れを起こす。図2では実際には当初予想されたよりも上昇率が低かったために発生するリスクを、想定不動産価格と実際の不動産価格の差によって示している。

これらのリスクに対して、アメリカの公・民のリバース・モーゲージ・プランでは次のような対応を行っている(財産税延納制度に関しては不明)。

1]長寿リスクヘの対応

保険方式による対応が可能である。公的プランの部は民間保険会社と連携した保険制度の導入が計画されている。

2]金利変動リスクヘの対応

変動金利型によりヘッジさせる。予想融資金利に適切なキャップ、フロアの設定が求められるが、異常な変動に対応するためには別のヘッジが必要となる。

3]不動産価額変動リスク

現行制度では掛け目を低く設定することで対応している。

長寿リスクと不動産価格下落リスクは発生頻度が比較的低いが、金利変動リスクはそれが比較的高い。リスク発生時のリスクの大きさは不動産価格下落リスクにおいて大きくなる。次にリスク・プーリングの可能性については、長寿リスクの場合は保険化が可能であるが、他の二つについてはそもそもマーケット・リスクであることから、プール化によるリスク・ヘッジは困難である。

アメリカではリバース・モーゲージ制度の安定的な維持のために、金利変動リスクに対しては各種デリバティブ(金利スワップやユーロドル先物等)の利用による金利リスクのヘッジ、不動産価格変動リスクに対しては不動産価格指数オプションによるヘッジや再保険機構の活用(災害等による異常な下落に対応するため)などが今後の課題として検討されているところである。

このほか、都市政策や住宅政策などの変更による影響、担保切れや意思能力喪失時における対応、回収が将来になることへの安定的な資金の調達、マンションなど共同住宅の評価の困難性などのリスクもあり、これらを含めて解決すべき課題は少なくない。財産税(固定資産税)の延納制度への応用にあたっても十分に検討がなされねばならないであろう。

 

 

 

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