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方式1ではpの値が所得水準が増えれば一定の上限まで上昇し、また、両方式においてcが所得が増えるにしたがって低下することで、さらに適用対象が低所得層に限定されることで、財産税負担の逆進性が緩和される。

サーキット・ブレーカー制度を実施している34州とDCのうち、23州とDCが高齢者と障害者に対象を限定している。一般にサーキット・ブレーカーは持ち家所有者に付加的条件を課すものであるが、29州とDCでは賃貸住宅居住者にも適用される(うち19州は高齢者、ないし障害者である賃貸住宅居住者に限定)。ちなみに、ハワイ州では賃貸住宅居住者のみが対象となっている。

また、サーキット・ブレーカー実施州のうち、メリーランド州とモンタナ州を除くすべてが適用対象者の所得に上限を設けている。所得の上限額は州によって大きく異なり、最も低い州はアリゾナで5,000ドル、最も高い州はニュージャージーの10万ドルである。

適用対象者の規模ではニュージャージー州が最も多い200万人で、ミシガン州の150万人、ニューヨーク州の50万人と続く。逆に対象者規模の少ないのはロードアイランド州で約3, 000人、次いでオクラホマ州の約3,600人である。

サーキット・ブレーカーによる平均減免額は、アリゾナ州の81ドルからメリーランド州の550ドルまで大きな格差がある。

3]延納制度

財産税の延納制度は18州で実施されている。この延納制度は高齢者を対象とした、一種のリバース・モーゲージ方式で行われ、高齢者に加えて障害者という要件を加える州もある。高齢者の財産税支払いを死亡時まで延期し、代わりにその不動産に抵当権を設定するというものであるが、実際にはあまり利用されない。アメリカでは持ち家を担保にして税を延納し、死亡時に清算することに対して高齢者に抵抗が強いからである。

 

(2) 財産税負担減免制度の主な事例

現在、全州およびコロンビア特別区において持ち家非課税制度、サーキット・ブレーカー制度が何らかのかたちで用いられているが、両制度を併用する州が多い。ただし、実際の内容は州によってさまざまである。1992年時点での幾つかの州の事例をみると、まず、フロリダ州ではかなり早い時期から持ち家非課税制度を採用しているが、その対象はかなり広い。持ち家住宅の評価額のうち最初の25,000ドルまでの部分について、また退役軍人の障害者の持ち家住宅は全額、それぞれ財産税の課税ベースから外される。この制度の対象者は約310万人で(全人口は約1,350万人)、地方団体の歳入ロスは約16億ドルと推計されている。

ミシガン州は年間所得82,650ドルまでの持ち家所有者、賃貸住宅居住者を対象としたサーキット・ブレーカー制度を有する。平均的な還付額、所得税税額控除額は約504ドルで、150万人以上がこの平均的な還付、税額控除を適用されている。ミシガンでは、このほかにも障害者の退役軍人を対象とした持ち家非課税制度がある。

ウェストバージニア州のサーキット・ブレーカー制度は年間所得5,000ドル以下の高齢者の持ち家所有者、賃貸住宅居住者を対象としている。同州では持ち家住宅非課税制度も実施しており、高齢者および障害者の持ち家所有者はその持ち家の資産評価額の最初の20,000ドルが非課税となる。

 

 

 

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