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持ち家非課税制度は持ち家住宅の評価額の一定割合を非課税とする制度であり、持ち家住宅に対する負担減免措置としては最も一般的である。適用対象が広く、低所得者だけでなく高所得者にもその恩恵が及ぶことや、賃貸住宅居住者よりも持ち家所有者を優遇すること、制度の運営コストを地方団体が負担せねばならないため特に評価の低い住宅の所有者が集中する地方団体にとって財政負担が重くなる、等の批判が多い。

他方、持ち家税額控除制度は財産税額の一部を税額控除するもので、通常、州がその運営コストを負担する。

持ち家非課税ないし持ち家税額控除の制度を採用している州は1995年時点で44州およびコロンビア特別区(以下、DCと略す)であるが、このうち18州では(持ち家所有者の)所得水準や年齢等に関係なく、持ち家であることのみを要件として制度が適用される。減免額の平均はカリフォルニア州の70ドルからDCの268ドルまで大きな差異がある。一部の州では高齢者や障害者に対して非課税額、税額控除額の割増し措置を講じている。また、モンタナ州のように単身者でAGI11, 921ドル未満、夫婦でAGI14, 305ドル未満の場合のみ、80,000ドルの非課税を適用するといった州もある。ただし、多くの州ではさらに厳しい要件を設けており、14州が高齢者、退役軍人、障害者に適用対象を限定し、さらにその半分の7州が所得水準に制限を設けている(この7州に限定すれば、平均減免額はノースカロライナの124ドルからアラスカの1,037ドルまでとなっている)。なお、対象を障害者、退役軍人に絞っている州も12州ある。

2]サーキット・ブレーカー制度

サーキット・ブレーカー制度は現在、34州とDCで採用されている。サーキット・ブレーカー制度は一般的には財産税額や所得水準に対応して州所得税額、地方財産税の還付ないし州所得税の税額控除を行う。持ち家非課税制度よりもさらに厳密に低所得者や障害者、高齢者に対象を限定され、対象となる人々が財産税負担の増加のために居住している住宅を売却せずにすむことを目標に設けられるものである。さらに、その制度の実施コストが地方団体ではなく州政府によって負担されるという点で持ち家非課税制度と異なっている。

”サーキット・ブレーカー”という呼称は財産税額が納税者の所得フローの担税力を超えた時に、財産税負担を遮断するというそのブレーカー機能からきているが、許容範囲の財産税額は家計所得の一定割合(所得水準によって異なる)として個々の州が決める。負担軽減額の算出には主として以下の2方式が用いられる。

 

方式1 (16州が採用)

負担軽減額=c(Ti−piYi)

方式2 (13州が採用)

負担軽減額=cTi

 

c=財産税軽減割合 c=c (Y)、c'<0

Ti=個人iの財産税額

pi=個人iに適用される一定比率

p=p(Y)、P'>0

Yi=個人iの家計所得(適用対象に所得上限もあり)

 

 

 

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