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第2に、公的疾病保険には、わが国の国民健康保険に相当する地区疾病金庫、わが国の健康保険組合に相当する企業金庫、同業者の組合である同業者金庫、船員金庫、連邦鉱山労働者組合、農業者金庫、職員補充金庫、労働者補充金庫の8つがある。1994年現在の加入者のうちわけをみると、地区疾病金庫が全体の44.7%と最も多く、補充金庫が33.9%、企業金庫が11.6%である。一方、農業者疾病金庫は1.8%にすぎない。

第3に、公的疾病保険の被保険者は、強制加入の者、任意加入の者、年金受給者、家族被保険者(被扶養者)に分かれる。被扶養者の条件は年収が一定額以下の、配偶者および子であることで、1995年ではその額は月580マルク(旧東ドイツ地域では月470マルク)である。被扶養者は公的疾病保険の保険料を払うことなく医療給付を受けることができる。これは、介護保険でも同じである。公的疾病保険加入者のうち、1994年で、強制加入者は全体の42.3%、任意加入者は6.6%、年金受給者は20.5%、家族被保険者は30.6%である。民間保険加入者は、当然、任意加入者が80.9%をしめ、家族被保険者が19.1%をしめる。

第4に、若いときに民間保険に加入していた者も年金を受給しはじめると、公的保険に加入する。年金受給者は公的保険の強制加入者であることが理由だが、民間保険ではリスクに応じた保険料を払わなければならないため、年金受給者の保険料は高くなるという現実的な理由もある。最近では、世代間の公平な所得再分配という観点から、年金受給者の公的疾病保険への強制加入および任意加入ともに資格要件が厳しくなっている。1989年以降は、現役世代の後半期の90%以上の期間、疾病保険の被保険者であった者が強制加入の適用を受け、加入義務から除かれる直近の5年間に12カ月以上または直近に連続して6カ月以上加入期間がある場合にのみ任意加入が認められることになった。

原則として、退職時に加入していた保険に、年金受給後も加入をする。前述したように、1996年からいずれの医療保険に加入するのかを、選択できることになった。

第5に、制度によって高齢化率や扶養率が異なる。強制加入者、任意加入者、年金受給者、家族被保険者について各制度で構成比をみると、旧西ドイツ地域では、次のようになっている。たとえば、地区疾病金庫では、強制加入者が41%、任意加入者が4%、年金受給者が23%、家族被保険者が31%であるのにたいし、企業疾病金庫では、強制加入者が34%、任意加入者が6%、年金受給者が24%、家族被保険者が36%である。

第6に、年金受給者以外の被保険者の平均基礎賃金を指数で表すと、次のようになる。1993年では、旧西ドイツ地域については、全疾病金庫の平均を1118とすると、地区疾病金庫は1060、同業疾病金庫では1036、企業疾病金庫では1355、連邦鉱山労働者疾病金庫では1285、船員疾病金庫では1517、労働者補充金庫では1223、職員補充金庫では1150である。地区疾病金庫、同業疾病金庫で低く、船員疾病金庫、企業疾病金庫で高い。

第7に、疾病保険を運営するのが疾病金庫である。労使の代表が疾病金庫を運営する。

第8に、保険料は、賃金、給与、および年金等に課され、毎年交渉で決定される。

 

 

 

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