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1 医療保険ならびに高齢者医療保障制度の財源構成

本節では、簡単に医療保険と高齢者医療保障制度の財源構成と財政調整制度について説明する。特徴は次のようにまとめることができる(1997年9月1日現在)。

(1) わが国の医療保険制度は、地域保険では国民健康保険、職域保険では、中小企業勤務者を対象にした政府管掌健康保険、主に大企業勤務者を対象にした健康保険組合、船員保険、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学教職員共済組合がある。国民健康保険には退職者医療制度があり、対象者は国民健康保険の被保険者であって、被用者年金の受給権者と被扶養者である。また、65歳以上の寝たきり状態の人、70歳以上の高齢者を対象とする老人保健制度がある。

(2) わが国の医療は、自由診療、出来高払い制である。医療保険では、原則として混合診療は認められておらず、近年拡大傾向にあるとはいえ、特定療養費として例外的に認められているだけである。

(3) 財源構成は、患者負担である一部負担金、保険料、国庫負担である。職域保険の一部負担金は、本人2割、家族は入院2割、外来3割である。外来薬剤は(6歳末満の者は免除)1日分につき1種類0円、2〜3種類30円、4〜5種類60円、6種類以上100円、外用薬投薬ごとに1種類50円、2種類100円、3種類以上150円、頓服薬投薬ごとに1種類につき10円である。

国民健康保険は、一部負担は3割で、外来薬剤は職域保険と同じである。退職者医療制度は本人2割、家族入院2割、外来3割であり、外来薬剤は職域保険と同じ。老人保健は、外来1回500円(同一医療機関ごとに一月4回を限度)、外来薬剤は職域保険と同じ(低所得者は免除)、入院1日1100円(平成10年度)、入院1日1200円(平成11年度)、低所得者は1日500円である。

(4) 国庫負担・補助は平成9年度予算で、政府管掌健康保険は給付費の13.0%(老人保健拠出金分16.4%)、健康保険組合は60億円、船員保険は30億円、各種救済組合はなし、国民健康保険は給付費の50%と財政調整交付金などとなっており、退職者医療制度はなしである。

(5) 保険料は、職域保険の政府管掌健康保険は標準報酬月額の8.5%、特別保険料は1%、健康保険組合は8.393%、船員保険は8.8%、各種共済組合は8.45%である。退職者医療制度は世帯ごとに応益割(定額)と応能割(負担能力に応じて)を賦課する。

(6) 老人保健は、公共部門(国、都道府県、市町村、各保険者)の財政調整によって成り立っている。負担割合は国が60分の12、都道府県・市町村がそれぞれ60分の3、各制度の保険者が60分の42である。ただし、老人保健施設療養費については、国が60分の20、都道府県・市町村がそれぞれ60分の5、各制度の保険者が60分の30である。

(7) わが国の国民医療費の財源構成は、国庫負担・補助や地方負担を合計した公費負担が約3割、保険料は6割弱、患者負担は1割強である。

 

2 社会保険と国庫負担

医療の財源を公的に賄う方式には、社会保険方式と税・移転方式がある。始めに社会保険の定義を述べる。

 

 

 

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