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地域福祉、とくに老人介護の分野では、この4段階すべてが非常にうまくあてはまる。第1段階の目標と計画の策定については次のことが言える。たとえば、自治体は現在、地域のニーズにあうように介護サービスなどを決める「介護保険事業計画」や「老人保健福祉計画」を策定中だが、策定委員会には抽選等で選ばれた住民代表が加わっている自治体もある。この計画は議会で決定されるわけではないが、行政にとれば拘束力を持つことになり実現可能性が高く、かつ住民選考が反映されたものにする必要がある。

第2段階はサービス供給の確保である。実施主体は必ずしも自治体である必要はない。自治体からの委託や自治体との契約を通じて、民間非営利団体や民間営利団体が実施主体となる。たとえば介護保険のケア供給主体は、民間非営利団体や民間営利団体でも公共部門でもいずれでも可能である。市町村の仕事は、第4段階とも関連するが、市場のルールが守られているか、サービスの質が確保されているか、たとえば介護保険の保険者として契約事業者のサービスの質を見分ける。住民は介護サービス実施主体としてかかわる場合がある。

第3段階は、仕事の評価である。目標をどれだけ達成することができたのかを評価する。そして評価できなかった場合はその理由を考える。たとえば、介護の分野では、たえず「老人保健福祉計画」や「介護保険事業計画」と照らしあわせて事業を見直すことになる。この分野でも住民の声を反映することができる。またよりきめこまかく、対象者の身体自立度の改善や満足度の向上も目標や評価に入れてよいだろう。

第4のサービスの質の確保などについてはオーストラリアでは、「老人虐待」に関して行政に相談窓口などをつくり、権利擁護に注意を払っている。介護をする人間や介護を受ける人間双方の権利の確立は日本でもこれからクローズアップされるだろう。サービスの監視も従来方の性善説に立った監査体制(経理の書類上の監査が中心で監査日も事前通告)ではなくて、ぬきうちでもサービスの質をチェックする体制が必要になる。ただこの場合には告発型にならず協力してよいサビスをつくりあげていくという姿勢が重要であって、またオンブズマンの存在も重要である。苦情処理はインフォーマルにまずは解決すべきものである。しかしそれがうまくいかずフォーマルな形で苦情申請がなされた場合には処理のための手続きを明確にする必要がある。

 

 

 

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