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第3に、権限の多くが市町村に移る一方で、県は権限を縮小していくと予想される。また都道府県間の合併もありうるだろう。県に要請される仕事はシンクタンクやコンサルタント的な仕事で、広域的な視点から市町村にアドバイスを与え、支援することになる。高齢者介護の分野では、これまで市町村と都道府県の意味のない競争が多くみられた。たとえばホームヘルパーの派遣など同じ行政サービスにたいして都道府県も市町村も補助金を与える場合である。それぞれの補助金なしには住民が当該行政サービスを利用できないという確証がなければ、こういう競合は避けたいものである。県の補助金がつく事業に新たに市町村が補助金を加える、あるいは市町村の補助金のつく事業に都道府県が新たな補助金を加えて、それを自治体の独自性と考えているのならそれは間違っている。

第4に、国はこれまでのように補助金を通じて、「効率的」に供給水準や行政サービスを操作することが困難になる。地域福祉にたいする国の姿勢は、たとえば、介護保険では市町村が知恵を出してまず計画をたてさまざまな供給主体がサービスを供給する等といったことを行いながら、改善すべき所が見つかったら改訂版を出していけばよいという考えである。したがって、県を介さず国と市町村の直接的な意思疎通等がこれまでよりも活発になる。このことも長期的には県の役割を縮小させる。

第5に、地方分権の観点からは介護保険が適用除外される市町村が出てきてもよいのである。

 

4. ニュー・パブリック・マネジメント

行政はこれまで民間部門に比べて仕事が非効率であると批判されてきた。また現在では、住民の声を反映しながら、どうすれば地方分権にふさわしい行政運営ができるのかという課題を背負っている。これらを解決する突破口は行政運営のあり様を変えることしかない。

1970年代より先進諸国で始まった新しい行政運営の方法は、民間の手法を行政に適用するものであって、行政の仕事を、1]目標を明確にし、計画を設定する、2]サービス供給を確保し、3]仕事の結果を評価し、4]情報公開や行政サービスの質を監視するという各段階に分けるものである。実はそれぞれの段階で住民の声を反映させる仕組みをつくることが可能である。

 

 

 

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