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3. 自治体間、政府間関係

地域福祉が自治体の新たな行政課題となるに従い、政府間の関係も大きく変化しつつある。すでに、1990年の老人福祉法の改正で施設福祉も在宅福祉も市町村の仕事となった。それまでに、団体委任事務が団体事務に変わり、国庫補助率も変更されたことはわたし達の知る所である。しかし、現在では、さらに、基礎的自治体間の関係、市町村と県の関係、国と地方の関係が変化しようとしている。順次みることにしよう。

第1に、広域行政はすでにゴミ処理や消防、病院の経営において経験ずみであるが、介護保険を契機として、広域行政が広がっている。たとえば、要介護度の認定を広域的連携で行ったり、施設の融通をしあったりである。しかし時代の動きは広域的連携だけには終わりそうもない。その理由は少子高齢社会の到来である。少子・高齢化の進展は人口減少社会をつくりだすが、全国均等に人口が減少するわけではない。およそ20年後には、日本は高齢化が進展しつつ、都市への人口集中が今よりも進むと予測されている。離島や過疎地では人口が激減し、人口の少ない市町村では行政サービスの供給コストが高まる。また道路の開通、交通網の発達で生活圏は行政区域と必ずしも一致しないために不都合も生じている。また市町村が責任主体となっている老人福祉は住民の生活圏に沿った計画や施設の配置等および規模の経済を発揮できなおかつ混雑現象が起きない程度の受給者対象者を確保するということは、福祉以外のサービスには比べものにならないくらい重要である。そして、保険者としては適度な人口規模が必要であり、最適な人口規模を求めて、合併が進むと思われる。事実、各都道府県も合併のシミュレーションに動き出している。

第2に、都市への人口集中およびこれから郡部よりも激しく高齢化が生じる都市の基盤整備には、自治体は今から取り組まなければ名ならない。加えて、ベッドタウンでは老後の生活を保障するための住宅担保貸付が利用されてよいだろう。このことは高齢者の担税力を高めることになる。

 

 

 

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