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北海道に住むヘルパーが沖縄在住の高齢者の生活を目常的に支えるわけにはいかない。第4は、情報が地域限定的であることである。

医療とは違って、介護という生活を支えるためのサービスを市場ですべて賄うとすれば莫大なコストがかかることになる。かといって、従来のように家族だけに頼ろうとすると、家族成員に大きなストレスを引き起こす。いずれの国をみても、また高福祉国家であっても依然として家族は介護の担い手であることにはかわりはないが、家族を外部から支える必要がでてきたのである。当然、財やサービスのうち、公的部門が関与する部分、市場で調達する部分、家族や近隣のようなインフォーマル部門による部分がうまく噛み合う必要がある。

地域福祉は後述するように、行政の仕事そのものを変えてしまう力を持っている。1993年度末までに全国津々浦々の自治体が完成することを要請された「老人保健福祉計画」は、各自治体の個々のニーズを把握して、サービスや施設、人材等の供給計画を立て、実行するというものであって、地方分権の試金石であった。端的に言えば、地域福祉は地方分権、地方主権の体制の中でもっとも実施しやすいものである。また、デンマークやスウエーデンでは、基礎的自治体が介護サービスの仕事を遂行するために、40年ほど前かなりの強権力をもって自治体数を3分の1に減らしてしまった。高齢者介護や地方財政をどう変えるのかを本稿では考えたい。本稿の構成は次のとおりである。第2節ではこれからの地方分権と介護保険について、第3節では自治体間、政府間の関係について、第4節ではニュー・パブリック・マネジメントについて、第5節では自治体自体および職員のこれから求めら資質について述べ結びとしよう。

 

2. 地方分権と高齢者介護

地方分権、地方主権は大きな流れである。また地域福祉、高齢者介護は地方分権の枠組みのなかでもっともうまく機能しやすいものである。1993年にまとめられた『老人保健福祉計画』を地方分権の試金石と名づけたが、正確に言えばあくまでも支出の分野における地方分権である。

その意味はスウエーデンの高齢者福祉と比較するとよく理解できる。スウエーデンでは、高齢者福祉を実現するために地方自治体の再編つまり合併を40年ほど前に実施してまず自治体の財政力をそろえた。

 

 

 

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