ナショナル・ミニマムを保障する考えに基づいた生活保護制度では、1995年度で標準3人世帯で17万274円(33歳男・29歳女・4歳(子))であり、老人2人世帯で14万4873円(72歳男・67歳女)である(いずれも1級地―1)。人口1000人にたいする保護率は1965年で全国平均が16.3であったが1994年には7.1と低下した。しかし、同じ1994年度においても地域によるばらつきが大きく、北海道が15.8、福岡、佐賀、長崎、大分の北九州地域が13.9、沖縄地域が12.9、四国が10.9、京都、大阪、兵庫の近畿I地域が10.8と高く、茨城、群馬、栃木、山梨、長野の関東II地域、東海地域が低い。費用の負担割合は、国が3/4、市町村が1/4を負担することになっている。
自治体の負担が社会保障財源のうち、どの程度を割合をしめるのを示すのが資料9である。これによると、1996年度の社会保障財源総額87兆円のうち被保険者拠出は29パーセント、事業主拠出は31.5パーセント、公費負担は24.5パーセント(国庫負担が19.3パーセント、地方自治体が5.2パーセント)である。時系列的にみると、自治体の負担はやや漸増傾向にある。今後は福祉その他の伸びが見こまれることから、この傾向は続くと思われる。
3. 自治体に関連する社会保障制度の問題点と今後の方向
(1) 社会保障制度の費用負担について自治体負担の根拠を明確にする必要がある。たとえば、生活保護については、実際に事務を遂行する自治体も財政責任を担うために自治体負担の理由は認められるが、国全体の制度でありまたほぼ機械的に対象者が特定できる児童手当は自治体が費用を負担する根拠は乏しい。児童手当にたいして自治体が費用を負担している国は筆者の知る限りない。
(2) わが国の医療保険や介護保険制度の財政調整は支出促進的であり、被保険者の経営努力を促すような財政調整が今後は望ましい。これについては、添付論文2と3を参照のこと。
(3) 介護保険は医療保険のように一般財源から赤字を補填するのではなくあくまでも保険料負担と介護サービスの給付を対応づける努力をすることが地方自治の観点からも重要である。
(4) 福祉サービスは今や普遍的性格を有しており個別に受益者を特定することが可能であり、基本的には利用料を軸にして応益原則に基づくことが適正な資源配分をもたらす。またこれには住民全体が負担を認識することが必要であり、地方税においては非課税最低限所得を低下させることは検討されてよい。