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そこで所得の分配地で分配された所得に比例的に課税するだけでなく、所得の発生地で発生した所得に比例的に課税する必要が出てくる。つまり、要素市場で分配された賃金、地代、利子、配当を分配地で比例的に課税するだけでなく、要素市場で支払われた賃金、地代、利子、配当に支払地でも比例的に課税すればよい。それは所得の生産局面で課税する所得型付加価値税を課税することを意味する。

ところが、日本では既に所得の生産局面で課税する地方税として事業税が存在している。したがって、生産局面での比例的所得課税という課題は、事業税の外形標準化となるはずである。

事業税を所得型付加価値税に改めれば、事業税が事業活動に応じた課税となる。そのため公共サービスによって地域社会の事業活動を活発化すれば、地方政府は安定的な財源を確保できる。

安定的な財源が確保できれば地方政府は、地域社会の事業活動を活発化させる公共サービスも増大させることができる。産業構造の情報化・知識化の進む現在では、こうした事業活動を活発化させる公共サービスは、地域社会の生活機能を支援する準私的財や生活保障インフラということができる。対人社会サービスが充足すれば、準私的財の供給や生活保障インフラの整備で地域社会の生活楼能が高まれば、情報や知識を発信できる人材が集まってくる。そうなれば地域社会の事業活動も活発化する。つまり、産業構造の情報化・知識化が進めば、生活機能支援サービスが生産機能の磁場となり、これまでのように生産機能支援サービスが生活機能の磁場となるという発想の転換が必要となる。

しかし、協力原理にもとづく地方税体系は、こうした所得の生産局面で比例的に課税される地方税を追加しただけでも不充分である。というのも、所得の生産局面での課税では、その地域社会で生産活動をおこなう人々にしか課税されないからである。

地域社会には生産活動ではなく、観光地や別荘地にみられるように、消費活動をおこないに来る人々もいる。もちろん、こうした他の地域社会の住民で消費活動をおこないに来る人々も、その地域社会の公共サービスを利用する。こうした人々には、消費に比例した負担を求めればよい。

ところが、日本には現在こうした地方税としての地方消費税が存在している。したがって、この地方消費税のウェイトを拡大していけばよいことになる。

このように地方税では所得循環の生産、分配、支出という三つの局面でバランスを取って課税する必要がある。協力原理にもとづく地方税体系の課税のインパクトを図示すれば、第7図のようになる。こうした協力原理にもとづく地方税体系が、「三つの福祉政府」体系を支える地方税体系ということができる。

 

賃金代替を支える社会保障負担

社会保障負担はそれを社会保険拠出と呼ぼうとも、「政府」としての社会保障基金への公的負担である。

 

 

 

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