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現行の老人福祉と老人医療の制度は、全額公費で賄う老人福祉(施設サービス: 特別養護老人ホーム、在宅サービス: ホームヘルプサービス、デイサービスなど)と医療保険料及び公費で賄う老人保健(施設サービス: 老人保健施設、療養型病床群など、在宅サービス: 老人訪問看護)で構成されているが、介護保険導入後には、これらのサービスを併せて介護保険料及び公費で賄う介護保険制度により運用するものである。

介護保険の給付総額の増加に伴って公費の負担も増加し、またそれに伴って地方団体の業務量も増加するものであり、さらに介護保険の運用の状況によっては、保険者である市町村が補てんする必要が生じてくるのではないかとの懸念等も考えられるところである。

介護保険制度の財政試算によると、現行制度では市町村が6,200億円、都道府県が3,800億円(1995(平成7)年度価格)の負担をしているのに対し、介護保険制度導入後の2000(平成12)年度には、市町村、都道府県ともにそれぞれ4,600億円の負担と試算されており、都道府県の負担額は増加しているものの、市町村の負担額が減少していることが認められる。一見すると介護保険制度導入後、介護保険料が入った分、公費負担が減り、その分は利用者である被保険者が負担をしているように見えるが、2005(平成17)年度には市町村及び都道府県の負担はそれぞれ6,100億円、2010(平成22)年度には7,600億円と試算されており、実際には高齢者の数が増加するにつれ、給付費も増加することから、介護保険を導入した後も地方団体の負担は増加していくものと考えられる。

 

3]地方財政の現状

少子・高齢社会に向けた介護保険の導入をはじめとする総合的な地域福祉施策の充実など財政需要が今後とも増加することが見込まれる一方で、地方財政は引き続き大変厳しい状況が続いている。

ア 巨額の財源不足と高い公債依存度

2000(平成12)年度の地方財政は、恒久的な減税の実施による減収額等が3兆5,026億円あるほか、引き続き通常収支においても9兆8,673億円もの大幅な財源不足が見込まれ、その不足を補填するため交付税特別会計等の借り入れ等を行うとともに財源対策債を発行し、その結果地方債依存度は12.5%で引き続き高水準となっている。

 

 

 

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