全国的には、特別養護老人ホームに入居している高齢者の6%、約1万7,000人が「自立」認定の影響を受けることが考えられ、短期的には、経過措置により対応するとしても、長期的にはそうした人々を受け入れる、(施設以外の)「高齢者の居場所」がないという問題は解決していない。特に地方においては、施設のゆとりから軽度の高齢者が終の棲家として入居している例も多いので、介護保険の導入により結果的にサービスの変更が生じる場合の影響が大きいと考えられる。経過措置は在宅サービスを受けている人には講じられないことをみれば、そもそも、経過措置が行き場のない高齢者の居場所に配慮していると考えられる。
今後は、「自立」と認定された高齢者の社会の受け皿として、ケアハウスやグループホームのような共同住宅の整備が重要である。現在は、高齢者の住宅問題が、介護保険の導入によって顕在化している状況にある。
(2) 行政による基盤整備
ア ゴールドプラン21
グループホーム等の施設の整備が望まれているが、現行の老人保健福祉計画は介護保険を想定していないこともあり、介護保険導入後の基盤整備のための長期計画が必要である。施設整備など介護保険の経済効果、たとえば、中学校区に対して、4.3億円投入した場合、従来の公共事業と同様の効果を認める研究もある。(図表5-1参照)
現在、痴呆に対して有効であるグループホームなどは全国で100箇所程度しかないが、平成11年12月に策定された「ゴールドプラン21」(別添資料参照)は、平成16年度までに痴呆性老人グループホーム3,200箇所の整備を見込んでいる。同プランにおいて、今後の介護に関する基盤整備のビジョンが示されたところである。
イ 介護基盤整備に対する財政支援
介護基盤の整備については、様々な財政支援が講じられているが、前述の痴呆性老人に対して有効とされるグループホームについては、現在整備箇所が少ない。これについては施設整備に係る国庫補助事業が他の施設に併設されるものしか認めないという現行制度(平成ll年度)により、対象となる事業者が限られ、意欲のあるNPO等が阻害されているとの声もある。こうしたNPOは、例えば、大阪府箕面市では、E型デイサービスを受託するなど、福祉の担い手としての役割を果たしつつある。