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第5章 高齢者福祉

 

1 はじめに

 

我が国社会の高齢化は、地方公共団体とりわけ基礎的自治体である市町村に様々な政策課題を突きつけている。我が国は今世紀に世界にも類を見ない高齢社会を迎えるものであり、中でも高齢者福祉のあり方が大きな政策課題となっている。

こうした状況を受け、平成12年4月より介護保険制度が実施される。本章においては、高齢者福祉の分野を取り上げ、市町村が介護保険制度を通じて直面する諸間題について、前章までの政策評価、情報公開、広域化、地方財政といったシステム改革の取組も踏まえて地方公共団体のあるべき方向を考えていく。

 

また、マスコミ等では、福祉に関して先進的な地方公共団体とそうでない地方公共団体というような議論が行われているが、実際の福祉施設設置状況等は、地方公共団体の置かれた状況(都市圏・地方圏、高齢化率、世帯構成人員等)によっても大きく異なることが想定される。そこで、各地方公共団体が「老人福祉計画」の中で策定した介護サービスの目標値は、各地域の社会的・経済的要因によって、どの程度統計的に説明が可能であるか、長峯純一関西学院大学教授が行われた分析について寄稿していただいた。

 

まずは、現在、介護保険制度導入を前に問題となっている点として、大きく次の3つがあげられる。次項から、それぞれの課題毎に事例等を踏まえ、その問題点を探ることとする。

1]判定に基づくサービスによる従前とのサービス格差

2]市町村による保険料のばらつき

3]介護保険導入に向けた広域化の取り組み

 

2 認定によるサービスの変化

 

介護保険は、要介護又は要支援の認定を受けた人に対して提供されるサービスについて保険が適用されるが、その認定結果によっては様々な影響が生じることとなる。

 

(1) 「自立」認定の影響−高齢者の居場所−

一番顕著な問題は、要介護認定で「自立」と判定された人に起こる。「自立」と認定された人は、特別養護老人ホームなど施設における従前のサービスで5年間継続される経過措置を経て、その後に対処していかなければならない。

 

 

 

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