日本財団 図書館


船舶に関連したPL法(製造物責任法)の概説

寳田('99.8.1.)

 

海上安全とは異なるが、「安全」関連のPL法について極く概説しておく。

 

1. PL法;

 

1.1. PL法(Product Liability Law);

 

PL法は「製品による被害(使用者の怪我や病気、死亡/使用者の物件の損害)が発生した場合、被害者は製品に欠陥があれば製造者等に損害賠償を請求することが出来る。」制度である。この制度は欠陥製品による被害者救済を目的としたものであり、製品の欠陥さえ立証できれば、企業の過失の有無に関係なく賠償責任を認める「無過失責任」が採用される特徴がある。

日本に於けるPL制度は平成6年(1994)12月、国民生活審議会の答申を受けて、翌平成7年(1995)4月国会に上程され、6月に可決され、7月1日に公布された。本年7月で4年経過したことになる。

消費者保護の法制度としてPL法が「物」の欠陥による被害を対象にしているのに対し、サービスや「商品の契約」によるトラブルから消費者を保護しようととする動きがある。即ち、目下経済企画庁を中心に立法を検討中の「消費者契約法(仮称)」は既に法制化されている「割賦販売法」を含めて、病院や金融等の全ての契約を対象とする法律で、契約時の「重要事項の秘匿」「強引な勧誘」「消費者に不当な不利な条項」を含んだものは無効とするものである。この中に目下大蔵省を中心に検討中の「金融サービス法(仮称)」を含めるかどうかは今後の検討対象になろう。この「消費者契約法」は成立すればPL法と共に消費者保護の「車の両輪」になるとされている。

 

044-1.gif

図1. 消費者保護の「車の両輪」

 

1.2. PL訴訟の件数;

 

日本に於いてはPL法施行は4年前からであり、歴史は浅いが、過去50年間で、現在のPL法に含まれると考えられるものを含めて約150件である。原告の消費者側が日本のPL訴訟で初めて勝訴したのは、本年6月末に判決が出た日本マクドナルドのPL訴訟で「ジュース内の異物で喉を傷つけられた」と言う内容のものであった。

米国はPL訴訟大国と言われ、1990年で年間19,000件が提訴されている。1974年から1990年の16年で約10倍になっている。この傾向を図2.に示したが、この数字は連邦地栽への提訴であり、州地栽に就いては統計がないため計上されていないが、一般には全体で年間100万件とも言われている。1)

 

044-2.gif

図2. PL訴訟件数の推移(全米)1)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION