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4)バラスト量の不足;

建造中バーサ号は通常のプラクティスに従ってバラストを搭載した。しかし、スペースの不足によってバラスト量が制約された。これに拍車を掛けたのが、バラスト搭載の管理不行き届きである。見掛け比重が極めて小さいことがこれを物語っている。

[現代の高速船等で、重量軽減のため、極力効率のよい固定バラスト配置を心掛ける結果として狭い場所に搭載することになる。バラスト搭載工事の管理はこれを承知して行わないと、空隙率が多くなり、バラスト重量が確保できないことがある。]

 

5)砲門孔の問題;

バラスト量と砲門孔の下縁と水面の距離の相剋が感じとられる。海水流入角が7〜10では問題外である。

[このことに関しては、最も関心を持たなければならない。浸水転覆の直接原因になっている。砲門孔と似た性格のものにカーフェリーの船首尾扉がある。これからの浸水で事故を起こした例はわが国では洞爺丸事件、欧州では数多くの事故が起こっている。近くはエストニヤ号の事故である。450年前から事故がおこっているのに、未だに解決していないことを反省しなければならない。]

 

6)全体のコォジネーターの不在;

計画から事故に至るまでを通覧して、船体、兵装、帆装、装飾、バラストの間に立って全体を責任持ってコォジネートした人物が不在である。

[技術が細分化している現在、このことは重要である]

 

7)艤装中復原性のテストを行ったにも拘らず;折角テストを行って不安定であることが分かったのに、そのまま出港が認められたのは何故か。王の早期完成の厳命があったとは言え。結果としては不安を感じた者は大勢いたが、誰も明確に口に出さなかったことによる。

[権威主義に負けずに、感じたことを率直に口にする環境が大切である]

 

復原性が圧倒的に不足していたことは言うまでもない。図7のBody Planは水線から上は幅が狭くなっている。この船型はこの時代、重心上昇を避けるために好んで採用されたものであるが、バーサ号は極端である。これが不適当であることはGZ曲線にも現れている。GZ max.が傾斜角6、7で10で急激に小さくなることは、余剰浮力が極端に少ないことを示唆している。

以上、「浸水」「転覆」に直結した370前の事故を考察して参考とする。

 

[参考文献]

1)Gunter Lanitzki 「Die Wasa von 1628」1990

2)Hans Soop 「The Power and The Glory」1992

3)Curt Borgenstam, Anders Sandstrom 「Why Vasa Capsized」

Vasa Museum, 2nd Edition 1995

 

 

 

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