現在も、その延長にあるが、反動からか、CADのDが、設計: デザインのDでなく、製図:ドラフティングのDに過ぎないところまで揺れ戻された感がある。
この段階にきて、「一貫システム」は"CAD/CAM"と捉え直されるが、ここでのCADと対にされる"CAM"とは、製造の自動化をコンピュータ技術で進めることを指している。
製造業では、まずNC加工を目的にコンピュータが導入されたことから、そのデータ作成段階を総称してCADとするのが一般化しているが、本書でいう数値現図の位置とは、CADとCAMの間に跨がってあるものと考えてよかろう。
製品: プロダクトに関わるのがCAD、工程: プロセスに関わるのがCAM。
事実、CAD側:部材形状計算(一品図段階)までを「一次現図」、CAM側:部材加工準備(ネスティング段階)を「二次現図」と区分することも行なわれている。
そして今、将来への方向としてCIM:コンピュータ統合生産が目指されている。
NCが部品のデジタル・モデルを倣うことで加工の自動化を実現したように、コンピュータの中に建造対象の船舶をモデルとして構築し、その参照において造船活動の総てをシステム化し、結び付ける。その概念の具現化が、現在大手造船業の描くCIMである。
西欧の中小造船所の中には、一足早く、その持てる技術者の全てを設計に集中して、モデル化:コンピュータ内での試作建造から取組んでいる所がある…と聞く。
もうすでに[NC=CAD]ではない。将来のCIMにおける船殻設計の構成は、改めて[図1.1.5 数値現図が基礎]に示すように、一貫化するはずである。
すでにNCを導入した所も、これから検討する所も、「現図場を完全にコンピュータに置き換える」視点から、基礎となる数値現図を眺めてほしい。不徹底な数値現図に止どまる限り、造船所のコンピュータ化に対する確信は、育ってこない。
なお、本書は説明を基本的な数値現図の範囲とするため、以上で触れた機能図や詳細図レベルのCAD上位システムとリンクしない、従来通りの設計「図面ありき」を前提としている。