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*パート・コーディング

デジタル・モデルの生成は、最初は現在のパソコンのようなディスプレイ:画面表示を見て、リアルタイム: 実時間(待ち時間なし、ほぼ同時)に操作するものではなかった。

「図形処理言語」という英数字で綴る規約用語を使って、部材を決める条件を手順を追って並べた文「形状定義プログラム」を書き、それをパンチカードに穿孔してインプットし、バッチ: 一括(ためおき・まとめ)で処理された。その結果をプロッターに描かせて、初めて求めた部材の画像を目にすることができる。それで、これを「パート・プログラム」又は「パート・コーディング」と称した。

不便極まりないものであったが、それだけに手順や流用に工夫が重ねられ、標準化が進んだ。

物理的な個別の堅い標準ではなく、論理的な共通取扱い、例えばパラメトリック:寸法可変のような柔らかい標準である。別冊『原寸型・定規』の[図5.2.6 ソフト・トーBKT標準例]参照。これまでの作画現図では繰り返された同要領の作業が、同一プログラムでの連続自動処理に変わった。

 

ここで形状定義と使った「定義」という用語は、いかにも堅いが、コンピュータに分からせるため「明確に決めて区別する」の意味である。

 

*自動設計の試み

このパート・コーディングの運用は、ソフトウェアでの標準化が更に広範囲の自動化への道に続いているのを示唆した。

最初に典型的な船舶を対象として、船殻設計から現図展開までの要領を手順通りに連続させた図形処理言語プログラムに構成しておけば、後の同類の船舶では、異なるデータのみ入れ替えるだけで、半ば自動的にプログラムが走り、数値現図を作り出せる。つまり類型船のあることが前提の、パチンコ並み「チン・ジャラ方式」システム化である。

これを"船殻一貫システム"と称し、折から需要の高かった超巨大タンカー: VLCCで開発が試みられ、40万ステップ: 行のプログラムが組上げられて、実用に供された。

システムを使っているうちに、プログラムの不具合点: 「虫」もとれてくるし、改善点も積み上げられるから、有効性は増してくる。

ここまでくると、伝統的な現図工程が担ってきた設計補完の機能があらわになり、数値現図ならば[詳細設計=現図]という本質が見えてくる。このシステム運用を機に、製造部門に属した現図職を、設計部門に集約する造船所が広がってきた。

 

*CAD/CAMからCIMへ

やがてコンピュータが日進月歩し、画像自体を操作して、インタラクティブ: 対話形式で使えるようになると、専用的に固められた「コンピュータが設計する」おもむきの「一貫システム」は、船型・船種・設計方式など変更の都度のメンテナンスの煩わしさが欠点と感じられるようになり、「人が設計する」のを「コンピュータが支援する」かたちの柔らかな"CAD"が優勢となってくる。

 

 

 

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