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(3) 紙文書と電子文書の統合管理

地方公共団体において、電子的な手段による文書管理システムの構築を行った場合においても、過去から現在に至るまでの紙を媒体とする行政文書の取り扱いの問題が残る。過去に作成された紙文書の占める割合は電子文書の割合に比べ遥かに大きく、また、紙媒体で収受した文書の取り扱いなど、今後庁内で発生する文書をすべて電子化することも難しい問題となるであろう。このため現実的には、紙による保管・保存も併存することが予想される。更に、情報公開制度の趣旨に基づいた場合、現用文書だけではなく、半現用文書(書庫などで保存している保存年限内文書)も対象となるものであり、当然過去の文書までを含めた適正な管理が不可欠となる。

紙文書と電子文書の統合管理を実現する方法として、電子文書については電子的な手段による文書管理システムによる管理を行い、紙文書についてはファイリング・システムによる分類管理を実施するとともに、紙文書の情報管理を電子的な手段による文書管理システム上で行う方法が考えられる。この方法により、紙文書と電子文書を一元的に管理することが可能になる。

また、紙文書の中でも、全庁的に共有することにより業務の効率化を図ることのできる行政文書やいわゆるナレッジ・マネジメント(知識管理:組織内の知的資産を効果的に活用するための手法)に適用できる行政文書については、紙媒体から電子媒体に変換し、すべての職員が閲覧できるよう電子的な手段による文書管理システムに登録し、組織的に知識共有することを考慮すべきであろう。

 

(4) 行政情報化の進展

住民や民間企業ではインターネットやケーブルテレビ網の利用が進み、行政情報化によりもたらされる高度な住民サービスの恩恵を享受できる環境が整備されつつある。また企業の経済活動においても電子商取引の普及が図られるなど急速な電子化が進められている。

一方、地方公共団体における行政情報化においては、行政文書がなかなか電子化されない問題、部局間の情報の共有や事務処理の連携が図られない問題など、情報技術やコンピュータ・ネットワークが十分に活用されていない状況が見られる。今後は、住民・企業・行政間において各種情報の電子的な流通・交換が要請されて行くのは間違い無く、その際に行政の情報化の遅延がボトルネックとなる可能性を否定できない。これは単に地方公共団体の問題にとどまらず、住民生活の高度化や企業の商取引などの進展を疎外する要因となりうることを十分に認識する必要がある。

 

 

 

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