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第3章 情報公開制度のもとでの文書管理システムの位置づけ

 

第1節 情報公開制度のもとでの文書管理の在り方

 

近年、地方公共団体においては、職員に対するパソコンの配備や、庁内LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)の整備、電子メールの活用、行政情報のホームページによる提供など、コンピュータ化とネットワーク化が急速に進んでいる。更に、文書事務作業においては、ワープロや表計算ソフトを使用するなど、行政情報の電子化が進められている。

一方、平成11(1999)年5月に成立した情報公開法第37条は、「行政文書の適正な管理」を行政機関の長の責務として規定し、行政文書の管理に関する定めの制定と公開(一般の閲覧)の義務を創設するとともに、行政文書の分類、作成、保存及び廃棄に関する基準その他の行政文書の管理に関する必要な事項を政令事項としている。また、同法は、地方公共団体における情報公開についても「必要な施策の策定」と「実施の努力義務」を明示しており、今後、地方公共団体における文書管理はより一層重要な位置付けになるものと考えられる。

本節では、今後の地方公共団体における文書管理の果たす役割の多様化を概観するとともに、文書管理の方法と課題を整理検討し、情報公開制度のもとでの文書管理システムの位置づけを明確にするとともに、電子的な手段による行政文書の管理の方法について提案する。

 

1 文書管理が果たす役割の多様化

 

地方公共団体における文書管理は、紙の行政文書管理の段階から、いわゆるファイリング・システムの導入を始め、行政事務の効率化・最適化、行政内部における情報の共有化・活性化、執務環境の向上が図られてきた。そして、これらの諸施策を通じて「行政事務の効率化を目的とした文書管理」への取組が行われてきた。

これらの方策は、組織だった文書管理の手法を行政活動の中に導入したものとして高く評価されるべきである。しかし、今後の地方公共団体における文書管理を考えてみると、社会経済情勢の変化に対応した行政改革の推進要請、行政情報化の進展、情報公開への対応など、地方公共団体を取り巻く環境が大きく変化していくものと予想され、文書管理の果たす役割についても多様化していくものと考えられる。また、行政活動の目的も更に多様化してきていることや、その目的を実現するための手段となる様々な電子技術についても現実に利用可能となってきていることから、多様化する目的に適合する最適な方法の導入をきめ細やかに検討すべき時代に入っていくものと予想される。これらの動向を踏まえると、従来の「行政事務の効率化を図るための文書管理」に加え、これを更に充実したものとする上でも、行政の透明性の確保や行政諸活動の説明責任の遂行を図る「情報公開に対応するための文書管理」へ、更には様々なチャンネルを通じた積極的な行政情報の提供と行政への住民参加の推進、行政手続の負担軽減を図る「住民サービスの向上を図るための文書管理」へと行政文書管理事務の目的を発展させるべき時機に来ており、このような方向性は、積極的に推進されるべきものと言えよう。

 

 

 

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