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また、地域の住民などが、「どのような行政情報をどこまで求めているのか」、更に「どのような手段で情報の提供を期待しているのか」などについても、地方公共団体が住民のニーズを把握し、行政情報の提供を効果的に行っていくことが求められるようになるであろう。

特に、提供する行政情報には、多くの住民が必要とする情報と、特定少数の住民のみが必要とする情報などに分けることができる。また、情報を提供するために発生する地方公共団体の労力についても考慮する必要がある。更に、行政情報をすべて提供することは、情報の氾濫を引き起こし、本来重要な情報が識別できなくなることから、必ずしも住民や地方公共団体にとって得策ではないと言う考えもある。如何に適切な情報を、適切な時期に漏れなく周知することができるかが重要と考える。

また、提供される行政情報については、既に決定された制度や事業内容が中心ではなく、制度や事業の構想段階から、その進行状況に関する情報を住民に提供するべきである。そのためには、構想前や意思形成過程、実施状況、監視・評価結果などについても、行政分野の特質を踏まえつつ提供すべき情報の分野と量を増やしていく努力を積み重ねる必要がある。

一方、住民側から見た場合、情報の入手先が所管部署ごとに区々に別れていたり、分かりにくくなっていたりしていないことが望ましい。すなわち、情報提供の場面においてもワン・ストップ・サービスが求められることになる。また、インターネットを用いた情報提供の場合にあっては、適切なガイド機能を凖備したり、ホームページのディレクトリ構造を工夫するなどして、必要な情報へのアクセスが容易にできるようにしておくことが望ましい。更に、情報提供が有効に機能するためには、住民に対し、どのような情報がどこにあるのかを分かりやすく知らせる必要がある。すなわち、行政情報の所在案内のための仕組みの整備も必要であると言える。このためには、行政組織内部における情報の管理の在り方そのものを見直す必要があり、また一定の情報については公表を義務づける制度を導入することも必要であろう。

なお、行政情報を提供する手段として、情報通信技術利用の浸透などから、今後、インターネットが中心となっていくと推測される。このこと自体は望ましいものと評価できよう。しかし、インターネットを手段とする情報提供に偏ることは、別の問題を惹起させかねない。例えば、インターネットによる情報提供にのみ偏し、それ以外のチャンネルによる情報提供を安易に停止してしまうと、パソコンなどの情報機器を保有しない住民や、操作に不慣れな情報弱者に対して公平な情報提供の機会を閉ざすことにもつながりかねない。したがって、最新の情報通信技術を十分に活用しながらも、併せて住民の間に不公平さが発生しないような配慮を尽くしつつ、迅速で効果的な情報提供を行う環境を構築・実現することが求められている。

 

 

 

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