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その時点で原本に貼りつけたマスキングテープは、開示請求者への閲覧後も貼りつけたままとし、以後、別の時点で開示対象文書となった際の同作業の手間を省くとともに、仮にその際に全文開示が認められた場合は、マスキングテープを外すことで、作業の効率化と費用削減を図っている。

これらのことから、地方公共団体では、実施機関が保有する行政文書を適正に管理し、開示請求に対する対応を効率的に運営できる仕組みを整備する必要がある。例えば、職員間での行政文書の検索や住民などが直接行政文書の目録や文書の概要などを検索できる仕組みが挙げられる。

一方、行政文書の開示請求権制度は、情報公開制度の中で重要な役割を果たしているが、住民側からすると、

・ 行政文書の開示請求をしない限り情報が得られないこと

・ 開示する情報は、原本であるため(地方公共団体が内容の加工などを行うことができないため)、開示される情報は住民にとって分かり易い形の情報であるとは限らないこと

などの欠点を有している。

したがって、地方公共団体が住民に対して説明すべき責務ないし義務(説明義務)を全うするという観点からすれば、個々の具体的な請求があった場合に開示するという受動的な情報提供を行うことだけにとどまらず、能動的な情報提供を積極的に進めていくことが望まれる。その実現のためには、広く住民などに行政情報を公表・提供できるように、従来からの情報提供施策や公表制度を一層充実し、公文書公開制度などとあいまって、総合的に情報公開を推進していく必要がある。これらは、いずれか一方があれば十分というものではなく、相互に補完し合う関係にあり、各々の良い面を活かし悪い面を補っていくことが重要である。とりわけ住民の地方行政への参加を一層促進するためには、政策形成過程の情報なども含め、必要な行政情報を適時適切に公表、提供し得る組織体制・制度を整備・拡充する必要がある。

 

 

 

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