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第2節 地方公共団体における情報公開への対応

 

本節では、従来から地方公共団体が実施している行政文書の公開にかかわる取組みの動向を概観し、平成11(1999)年5月に成立した国の情報公開法に対応すべく各地方公共団体が情報公開条例の検討や見直しに取り組む中で検討されている諸論点について述べることとする。

 

1 情報公開条例(要綱等)の制定状況

 

地方公共団体が保有する行政文書の公開に関する条例の制定状況を見ると、各地方公共団体によって異なっており、必ずしもすべての地方公共団体が情報公開条例や要綱等を制定しているわけではない。

日本で情報公開という概念が意識的に使われるようになったのは、1970年代頃からと言われている。情報公開の基本理念である「知る権利」「知る自由」という言葉自体は、戦後まもなく使われ始めているが、特に1970年代後半に発生したロッキード事件以降、国や地方公共団体が執行する施策や事業内容への不信感から、行政情報の公開についての関心が高まり、学識経験者や住民団体などを中心として、情報公開を法的制度にすべきであるとの要望が強まった。

これらの声に対応するために一部の地方公共団体では、行政文書の公開に向け積極的に対応するための検討が進められてきた。例えば、神奈川県では、昭和54(1979)年に情報公開準備委員会を設置し、情報公開に向けた検討を開始している。昭和55(1980)年4月、都道府県及び政令指定都市を対象に自治省が実施した情報公開の検討状況に関する調査結果によると、全体の約40%で「検討中」や「検討開始」など情報公開に対して何らかの積極的な姿勢を示す結果がでている。しかし、情報公開条例の制定までには至っていなかった。実際に情報公開を制定したのは山形県金山町が最も早く、昭和57(1982)年3月に条例化を図り全国の注目を浴びた。その後、国の情報公開に対する本格的な取組みと並行して、条例を制定する地方公共団体が増加した。

自治省が行った地方公共団体における情報公開条例(要綱等)の制定状況に関する調査結果によると、平成8(1996)年4月1日現在、都道府県及び市区町村を合わせた地方公共団体全体では約10%の336団体が条例(要綱等)を制定済みであったが、3年後の平成11(1999)年4月1日現在では、約27.5%の908団体が条例(要綱等)を制定済みとなっており、3年間で572団体と約170%の大幅な増加となっている。

このうち、都道府県ではすべての団体で条例の制定が行われている。

 

 

 

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