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第3節 行政文書の電子化と共用

 

1 行政における情報と行政情報化

 

企業経営が情報を駆使して運営されているのと同様に、行政における情報も重要な要件である。企業経営では、顧客ニーズについて、その質や大きさ、分布、更にはその時間的・動態的変化について膨大な量の情報を収集し処理することで顧客満足の得られるサービス等を提供することが可能となる(注1)。この顧客を住民に置き換えれば、行政における情報ということになる。更に、情報技術等の普及により、需要側のサービス等に対する顧客満足の度合いが向上し、より顧客(住民)満足度の高いサービス等の開発スピードを高速化する必要性が生まれることになる。これはHammer & Champyが「1980年代の初頭からアメリカとその他の先進諸国では、売り手と顧客の関係における主導権が逆転した」(注2)と述べるように、需要側の情報化も進み、サービス等に対する評価としての情報などを独自に入手し、それに基づいて需要側が意思決定を行っているからである。更に、情報技術を利用しているのは、もはや供給側のみでなく、場合によっては供給側より新しい情報技術が需要側に存在することもあり得るようになっている。このようにして、供給側の提供と需要側の要求が、顧客(住民)満足のパフォーマンスのより高いものが求められる方向に進み、特に市場経済原理が働く企業経営では顧客側の情報化の進展が、その開発スピードを高速化させなければ機会損失をうむことになる。現在、日本の行政に対する住民の要求はそれほど高くないとは言え、情報の重要性は加速度的に増していくことは否めない。

これらの供給側の情報は、Max Weberが文書主義(Aktenmaessingkeit)(注3)と呼んだように、紙に情報を記述した文書により行われた。それは、業務遂行の手段として事務が行われ、事務で取り扱われるのが情報を記述した文書であるからである。このような事務(機能事務)は、業務の機能を遂行するための事務であり、Leffingwell & Robinson の結合機能(注4)(linking function: 事務は組織体における各部門の調整と結合を担うもので、各部門の業務がうまく遂行するように援助するものである)を具現化するものである。また、この機能事務から付随的に行われることになる管理活動としての事務(管理事務)が文書により行われることになる。このように事務(オフィス)の機能は基本的に情報処理であり、そこで生成される文書は組織の質や規模の展開に伴い膨大な量になり情報管理が必要とされる。情報管理とは、各種の情報を組織目的に適合するための一連の管理活動であり、その目的とするところは、意思決定の効果的な支援であり、組織管理の効率的な運用であるといえる。

 

 

 

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