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4 電子文書の証明力

 

現行法令の多くは電子文書の存在しない時期に立法されたものであるため、電子文書の証明力については不明の部分が多い。しかも、一口に「文書の証明力」と言っても、その事柄や内容によって異ならざるを得ないことも当然のことであるから、個々の文書の種類や内容に従い、個別的な検討と対応が必要となろう。

現行法令上、電子文書の証明力について規律する法律の例として不動産登記法がある。同法151条の4は、電磁的記録として保存された登記事項データに基づいて出力される登記事項証明書の効力について「登記簿ノ謄本又ハ抄本ト看做ス」と規定している。そして、このような電磁的記録による登記事項データの管理のために詳細な細則が定められている。今後、同趣旨の法令が増加するものと思われるが、個々のシステムによって出力内容の確実性にばらつきがあるとその信頼性評価にも悪影響を与えることになるので、そのような電子処理の実現に当たっては、ファイルのフォーマット、出力のフォーマット、ファイルの履歴管理方式などを含めた明確かつ共通の実施細則を定めておく必要があろう。

他方、電子文書の証明力の関連では、民事訴訟法上の文書の真正に関する規定の適用の有無も問題となる。一般に、「文書の真正」とは、「その文書が作成名義人によって作成されたこと」を意味する。そして、一般に、真正に作成された文書は、その文書に記載された内容のとおりの効力を有するものであるとも推定されるというのが最高裁判例の立場である。したがって、特定の文書が「作成名義人によって作成されたこと」の証明が非常に重要になってくるが、現実には、その証明は必ずしも容易ではない。そこで、民事訴訟法228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定し、同条2項は、「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。」と規定している。しかし、ここでいう「私文書」や「公文書」に電子文書が含まれるかどうかについては解釈上疑義がある。また、「印鑑」や「署名」の中に「電子署名」や「電子認証」が含まれるかどうかも必ずしも明らかではない。ただ、公文書については、同条3項が「公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。」と規定しているので、電子文書であっても、当該電子文書の所管官庁ないし所管自治体から「当該電子文書は権限のある官吏により真正に作成されたものである」旨の照会回答をすれば、その電子文書の証明力が維持されやすいものと解される。

なお、この点に関し、アメリカ合衆国やドイツなどでは電子文書及び電子署名の法的有効性を承認するための立法がなされた。目下、日本においても電子署名法案の立法が鋭意検討されている。

 

 

 

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