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今後、電子文書にあっては、このような意味での一定の電子状態の電子認証があれば、その認証を与えられた電子ファイルすべてを原本としての法的効力を有するものとして扱うことになろう。

この点に関して、現在の法解釈は必ずしも確定したものとは言えないが、通説的見解によれば、プリントアウトをもって原本とすることができ、そのプリントアウトに用いられた電子ファイルは原本としてのプリントアウトを作成するための資料(部品)としての意味を有するに過ぎないと解されている。しかし、今後、電子ファイルのみで処理され、プリントアウトを出力しない行政行為が増加することを考えると、電子ファイルそれ自体の原本性が問題とならざるを得ない。そして、この場合の原本性は、システム上の履歴管理が可能であることを必須の前提として、特定のファイルについて特定の時点における電子状態について、権限を有する官吏により電子認証をするという方法によって維持するのが最も合理的である。

 

3 電子文書により保存・管理するための法令上の措置

 

現在のところ、電子文書により法定の文書を保存・管理することを許容する根拠法令としては、地方税法、住民基本台帳法、不動産登記法などの例はあるものの、必ずしも多いとは言えない。一般的な解釈基準を前提にすると、現行法規の多くが電子文書の存在しない時代に制定されたものであり、そこで想定されているのは紙の文書を前提にした文書管理のみである。このため、地方公共団体の条例で対処できる問題については、電子ファイリングの導入が可能であるように条例改正などもなされてきた。しかし、法律の条文上明らかに紙の文書による保存が義務付けられているものについては、電子文書と紙の文書の両方による保存が必要となる。このため、今後、統一的な電子文書管理を目指すとすれば、非常に多くの法令の見直しが必要である。

なお、上記のように電子ファイルの保存性には一定の限界があることから、すべての「文書」について電子ファイル化することは時期尚早であるかもしれない。したがって、確実に保存されるべき部類に属する文書については、電子ファイリングの導入を許容するような法改正がなされる場合であっても、電子的な文書処理システムが社会的に安定したものとなるまでの間の経過措置として、紙のプリントアウトをいわば電子文書のバックアップとして保管することを義務付ける措置が必要であろう。

 

 

 

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