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すなわち、電磁的記録にあっては、その複製だけではなく改ざんもまた極めて容易であるということになる。万が一改ざんがなされたとしても、紙の文書の場合には、その紙に染み込んだインクの識別・鑑定等により改ざんの有無を後になって検討することは可能である。しかし、電磁的記録については、元の文字コードも改ざん後の文字コードも質的には全く同じ文字コードであるから、そのファイルの文字コード列の存在形態から改ざんの有無を検討することは不可能又は困難である。

 

電磁的記録により文書管理をする際には、電磁的記録の持つこれらの特性を十分に理解した上で、合理的な管理方法を確立することが必要である。

 

2 電子文書の原本性の確保

 

電子文書の原本性を確保するためには、電子文書へのアクセス管理の徹底と原本認証システムの確立を検討し実施する必要がある。

まず、アクセス管理の徹底であるが、電子文書は、本来的に複製の作成や改ざんが容易であるから、問題になるファイルに対するアクセス権限を分別し、書き換えや修正をする権限のある者を限定し、あるいは、書き換えや修正のためのアクセス要求を監視することによって、権限によらないでなされるファイルの消去や変更を防止しなければならない。そのためには、合理的なアクセス管理の組織と運用基準が明確に定められ、そして、関連部署全部に徹底されている必要がある。また、システム構築に関しても、必要に応じて内容の異なるアクセス権限を付与し管理し得るような機能を満たすものとすべきである。このことは原本認証システムを構築するためにも必須の前提である。

他方では、原本認証システムの確立も重要である。ここでいう原本認証とは、機能的な意味で原本と同等の価値を有する電子ファイルないしその出力であるプリントアウトなどが存在する場合において、それらが「法的に原本として扱われるべき電子文書と法的に同等の価値を有すること」を認証することを意味する。上記のように、電子文書は複製が容易である。また、通常の電子化された文書処理では、一度作成された電子文書を利用して部分修正された新たな電子文書が作成されることも珍しくない。この場合、修正前の電子文書も原本であり、修正後のものも原本であると考えられるが、それぞれの歴史的時点における電子ファイルとしての状態がどうであったのかをトレースできるシステム(履歴管理機能のあるシステム)では、それぞれの時点における存在形式が何であったかを電子的に認証することが可能である。

 

 

 

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