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また、保存された電子記録のリフレッシュやディスク装置の入れ替えのために装置の管理業者がファイルの一括転記を実施し、もとのファイルを消去するような場合も同様である。これらの場合、端末装畳の画面上からは何ら変化が認められなくても、歴史的に存在した最初の電子ファイルではなく、その複製物をもって原本ファイルとして処理していることになる。こうしたことから、行政文書の原本管理としての電子文書ないし電磁的記録の管理には、紙の文書とは異なる観点からの管理技法が求められることになる。

 

(2) 保存上の困難性

他方で、電磁的記録は、ある意味での保存の困難性を有する。「紙」は中国の後漢時代に蔡倫によって発明されたものであって、非常に長い歴史を持つ。それゆえ、存在形態としては安定した「かたち」を持つ文化的産物である。冊子体としても一葉の紙としてもそれを管理する方法が社会的に確立している。しかも、例えば庁舎の建替えや所管部署の統廃合のような場合を除き、その保管場所の変更もそう頻繁に起こるわけではない。しかし、電磁的記録については、その記憶媒体の技術革新の速度が余りに速いため、電磁的記録の保管場所としての記憶媒体及び駆動装置が数年を経ずしてたちまち陳腐化する。その結果、記憶装置の更新・入れ替え、データやファイルの一括転記がかなり短期間に実施され得る。これは、そもそも電子情報技術が発達上の技術であり、いまだ社会的に安定した存在になっているとはいえないことに起因する。また、電磁的記録は、それをコンピュータで機能させるために、電気の安定した供給を要する。それが不安定なところでは、その保存についても不安が発生する。これは、電源を必要としない紙の文書とは異なる電磁的記録の宿命と言えよう。このように物理的存在としての電磁的記録は、その保存性に関し、ある意味で紙の文書よりも多くの困難性を抱えているということができる。

 

(3) 複製・改ざんの容易性

更に、電磁的記録は、上記のように全く同一のものを複数作成することが原理的に可能であり容易でもある。このことから、適法な権限によらないで複製物が作成される危険性が大きい。また、電磁的記録にあっては、文書内容の書き換えは文字コードの入れ替えによって容易になされ得る。

 

 

 

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