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2 情報公開制度と文書管理制度の必要性

 

情報公開制度は、行政機関が保有する行政情報の内容を国民の請求に応じて公開する制度であるが、情報は記録され、保存されていなければ、請求に対応できない。行政計画の立案過程や行政実績の評価などに関して、制度が効果を発揮していない理由は、これらの分野における文書、資料が十分に存在しないためである。

このため、情報公開法においては、「情報公開と行政文書の管理は車の両輪」という考え方に基づき、「行政文書の管理」という1条が設けられ、「行政機関の長は、政令の定めるところにより行政文書の管理に関する定めを設けるとともに、これを一般の閲覧に供しなければならない」「前項の政令においては、行政文書の分類、作成、保存及び廃棄に関する基準その他の行政文書の管理に関する必要な事項について定めるものとする」(第37条)などとされている。

制度の対象となる行政文書の範囲についても、見直しが行われた。

これまでの地方公共団体の条例においては、公文書とは紙を媒体とした書類や図画、それに映像や録音テープなどと定義されている例が多いが、近年、行政の情報化が進み、情報の媒体が急速に紙から電子データにシフトしている状況に鑑み、電磁的記録が含められることになった。

また、立案過程の文書などについては、これまで最大限の情報公開を求める立場からは、「行政機関が保有しているもの」や「行政機関の職員が職務上、作成又は取得したもの」はすべて対象とし、成熟度に問題がある文書は、別途、非開示条項を適用して非開示とすればよいという考え方が提唱されていたが、これまでの条例においては、決裁、供覧等の事案決定手続を終えたもののみが対象とされている例が多かった。

決定済みの文書だけが公開の対象とされたのでは、国民は行政に参加することもできないし、意思形成過程が不明瞭なままでは行政の説明責任も果たし得ない。このため情報公開法においては、行政機関に保有されているいわゆる一件綴りなどは、開示・非開示の判断は別として、制度の対象に含めるべきであるという考え方から、「行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」(法案第2条第2項)という新しい定義が定められた。

しかしながら、この考え方によって課題が解決されたとは即断できない。

これまで、我が国の行政においては、文書管理は余り重視されてこなかったからである。

 

 

 

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